国土交通省と環境省は、カーシェアリングや地域交通、物流網を担う車両の電動化と再生可能エネルギー設備を同時に導入する民間事業者、団体、地方自治体の取り組みを支援する事業を2023年度から開始する。電動車両、再エネ設備、充電インフラなどの購入費用を一定額補助する。モビリティの脱炭素化を図るとともに、電動車を「走る蓄電池」として災害時の非常用電源に活用するなど地域の災害対応強化にもつなげたい考えだ。

23年度予算概算要求に盛り込んだ。エネルギー対策特別会計を活用し、新事業の予算に約20億円を計上した。電動車および再エネ設備の導入支援と、電動車を活用したマスタープランの策定を支援する。
新事業で対象とする電動車は、原則として電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)とする。タクシーは燃料電池自動車(FCV)も認める方向で今後検討する。
カーシェアやレンタカー、トラック、バス、タクシーの車両をEVなどに代替または新規購入すると同時に、再エネ設備を導入することが補助条件とする。敷地の問題などで再エネ設備の設置が難しい場合には、再エネ調達の実践をもって補助を認める考えだ。
自然災害の激甚化・頻発化を背景に災害対策の強化を図るため、充放電設備や外部給電器の導入についても支援する。急速充電器も含めた地域の充電インフラの拡充につなげて、EVなどを災害時や停電時の非常用電源として活用する。
事業形態は間接補助事業とする。車両や再エネ設備などに対する具体的な補助率などは、現在、他事業で展開している電動車促進事業などを参考に詰める。補助金の交付額上限を設けた上で、車両の場合は車両本体価格(消費税抜き)に、充電インフラなどは設備・工事費にそれぞれ補助する見通しだ。
新事業にはEVの普及促進などによる移動の脱炭素化だけでなく、カーシェアやレンタカーの車両も補助対象にすることで所有から共有の移行を促進し循環経済の実現を目指す狙いもある。環境省は21年度補正予算で、地方自治体の公用車や民間社用車を対象に、電動車と再エネ設備を同時導入して地域住民とのカーシェアや災害対策に生かすための支援事業を展開している。
新事業は、実施期間を23年度から27年度までの5年間と定めた「地域・くらしの脱炭素型交通等モデル構築加速化事業」の主要3本柱の一つ。ほかには、経済産業省と一部連携した「バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業」と、環境省単独による「ビッグデータを活用したゼロカーボン・ドライブ等強化促進事業」がある。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月5日号より