国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、地球温暖化に関する最新の科学的知見をまとめ、このほど「第6次統合報告書」として公表した。産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるパリ協定の目標達成には、世界の温室効果ガス(GHG)の排出量を2035年までに60%減らす必要性を示した。各国のGHG削減目標は不十分とし、「この10年の選択と行動が現在と今後の数千年に影響する」と警鐘を鳴らした。
報告書では、1850~1900年を基準とした世界平均気温が2011~20年に「1.1度上昇した」と明記。「人間活動が主にGHGの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことは疑う余地がない」とも指摘した。
また、世界各国で現状の地球温暖化防止対策を継続した場合、「継続的なGHG排出は更なる地球温暖化をもたらし、「短期のうちに1.5度に達する」との厳しい見通しも示した。
こうした事態を防ぐためには、世界のGHG排出量を減少基調に転じさせ「30年には19年比で43%程度、削減する必要がある」とした。その上で35年に同60%減、40年に69%減、50年に84%減と、継続的なGHG削減対策に取り組むことの必要性も強調した。
国連のグテレス事務総長は「気候の時限爆弾が針を進めている」と危機感を示すとともに、先進国は35年、途上国などの国は40年までに、それぞれ発電時のGHG排出量を実質ゼロにするよう求めた。
先進国は、50年のGHG実質排出ゼロの達成に向け、30年に10年比45%削減を目指している。日本も30年度に13年度比46%削減を目標に掲げる。各国とも今回の報告書を踏まえ、35年の目標を25年までに国連に提出することになるが、現状の削減目標を大幅に上積みすることが求められそうだ。
IPCCの報告書公表を受けて、西村明宏環境相は「今すぐ対策を講じることで、温暖化に関連したリスクを抑えることが可能であることも示された。IPCCの科学的知見を踏まえ、政府は緩和策・適応策の両面から対策を強化する」などとする談話を発表した。
各国政府の代表や国連機関などから約650人が主席したIPCCの総会は13~20日にスイス・インターラーケンで開かれた。報告書の公表は14年以来、9年ぶりとなる。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月23日号より