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自動車業界トピックス

国際自動車工業連合会、カーボンニュートラル達成「EV、唯一の手段ではない」

自工会の主張と“ワンボイス”

電気自動車(EV)はカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)達成の重要技術だが、唯一の手段ではない―。国際自動車工業連合会(OICA)は16日に発表したグローバルな脱炭素化の政策提言の中で、カーボンニュートラルにおける多様な選択肢の重要性について言及した。これまで日本自動車工業会(自工会)が主張してきた内容と同様で、カーボンニュートラルに対する自動車業界の考え方は国際的に共通した〝ワンボイス〟であることを示した格好だ。

「規制で選択肢を狭めるべきではない」と述べる自工会の豊田会長(5/19の記者会見)

今回のOICAの発表は「カーボンニュートラルへの道筋は各国の状況に合わせて柔軟に策定するべき」「自動車産業単独ではなく、政府の協力やエコシステム全体での投資が必要」という内容。ジョン・ボゼッラ会長は「電化は輸送の未来であり、カーボンニュートラル達成の鍵」としつつ、「全ての国にとって特効薬ではない。交通の脱炭素化を進展させるためには、技術的に中立で多面的な政策アプローチが重要だ」とコメントした。この主張は自工会が従来から言い続けてきた内容と同じだ。

例えばEVシフトを進めている欧州では、再生可能エネルギーの比率が35%で、30年には65%と高い目標を掲げている。火力発電が中心で再エネ比率が2割弱にとどまる日本とは事情が異なる。

自工会はカーボンニュートラル達成の目的は共通だが、その手法は国や地域の状況に合わせるべきとの考え方のもと、技術の選択肢を狭めるべきではないと主張してきた。19日の記者会見でも豊田章男会長は「カーボンニュートラルという山の登り方は一つではない。技術力を生かすには規制で選択肢を狭めるべきではない」と改めて言及した。

豊田会長は「世の中の理解も深まり、一緒にやろうという仲間も増えてきた」と自工会としての考え方を発信し続けてきた成果が表れていることを強調し、「カーボンニュートラルは日本の自動車産業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)技術を磨くチャンスでもある」と述べた。

三部敏宏副会長は「OICAは自工会の意見をベースに、技術だけではなく、エネルギーも含めた多様な選択肢の重要性について発信している」と述べた。自工会はOICAの会合などでも多様な選択肢の重要性について働きかけてきた。この効果もありG7(主要7カ国)の気候・エネルギー・環境大臣会合前のリリースにつながった。

三部副会長はカーボンニュートラルに向けたサプライチェーンでの取り組みにも触れ、ポイントとして二酸化炭素(CO)排出量を把握する「見える化」とCOを減らす活動の2点を挙げた。見える化の領域では、製品ライフサイクル全体でのCO排出量の算出に関する国際的なガイドライン策定に向けて、日本として議論をリードできるように取り組んでいると説明した。

自工会はカーボンニュートラル達成に向けて日本自動車部品工業会(有馬浩二会長)と連携する方針を掲げる。各国の自動車工業会や政府とも連携、協力しながら業界全体でのカーボンニュートラル達成や自動車産業の国際競争力の維持に向けて取り組む。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月31日号より