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自動車業界トピックス

外国人技能実習制度の見直し、整備業界が注視

「特定技能2号」の転籍制限緩和で都市部に偏る懸念も

外国人技能実習制度の見直しを自動車整備業界が注視している。在留期間の更新に制限がない「特定技能2号」の対象に自動車整備業が加わる可能性が浮上した半面、転籍制限が緩和されることで、より高い賃金を求めて都市部に技能実習生が偏る懸念も指摘される。政府は特定技能2号の対象拡大を6月にも閣議決定したい考えだが、与党内には慎重論もある。議論の行方が注目される。

現行の技能実習制度は人材育成を通じた「国際貢献」を目的に1993年に始まった。自動車整備は19年4月から「特定技能1号」として外国人の受け入れを始め、最長5年の在留を認めている。在留外国人数は22年12月末で1738人。国籍別ではベトナムが827人と半数近くを占める。都道府県別では愛知県が161人と最多で、埼玉県(131人)、千葉県(112人)などと続く。

技能実習制度は一方で、外国人を低賃金で働かせたり、不法滞在の温床となるなど、制度の趣旨と実態の乖離(かいり)が問題視されてきた経緯もある。

こうした中、政府の有識者会議は19日、技能実習生が「労働力」として日本社会に貢献していることを認めつつ、これまで指摘されてきた問題を踏まえ「現行制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度の創設を検討すべき」と提言した。労働者としての権利を高め、現行制度では原則認められていない転籍を緩和することも求めた。また、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる「特定技能制度」は「引き続き活用する方向で検討すべき」とした。

 24日には、熟練技能を持つ外国人に与えられる「特定技能2号」の対象を、現在の2分野(建設と造船・舶用工業)から自動車整備を含む11分野に拡大する案を政府が自民党に示した。特定技能2号は在留期間の更新に制限はなく、家族の帯同も可能。長期的な就労を促し、人手不足の解消につなげるのが狙いだ。

ただ、自民党内からは「事実上の移民の受け入れにつながる」などと慎重論も出た。ある監理団体で自動車整備分野を担当する関係者は、転籍緩和の検討について「最低賃金が高い首都圏に技能実習生が集中し、最低賃金が低い地域の整備事業者から人材が離れていく」と話す。有識者会議でも「技能実習生の当初賃金を全国統一にするため、補填(ほてん)の仕組みを作るなど制度的な検討が必要ではないか」との意見が出る。

 人手不足が深刻化する自動動車整備業界だが、日本自動車整備振興会連合会(竹林武一会長)の調査によると、外国人整備士の雇用に及び腰の事業者が多い。全国約9万1千工場の約7~8割が中小・小規模(零細)事業者で「生活支援などが負担で、外国人を雇用する余裕がない」(業界関係者)ことなどが理由だ。政府は19年度からの5年間で最大6500人の受け入れを見込むが、今は3分の1にとどまる。

新たな技能実習制度の全容が明らかになるのはこれからで、関連法改正を伴う可能性もあるため、適用開始は24年度以降となる見通し。賃金のあり方や監理・評価制度、キャリアパスの構築など課題は山積する。制度の実効性を高めて技能実習生を増やし、人手不足解消の一助となるか、今後の議論が注目される。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月28日号より