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自動車業界トピックス

対象車種広がるユニバーサルデザインタクシー

国交省は各都道府県で25%を目標に

トヨタ「シエンタ ウェルキャブ仕様タイプ1」

「標準仕様ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)」の対象車種が広がっている。4月に新たな認定基準「レベル準1」を追加して以降、今月22日までに3車種増えた。いずれも車両後方から車いすの乗降ができるミニバンだ。車両価格も手頃なことから、UDタクシーの普及促進が期待される。

ユニバーサルデザインは1980年代に米国で生まれた概念だ。身体的な障がいはもちろん、言語や国籍、性別などあらゆる「違い」に関係なく利用できるデザインを指す。デザインの対象を障がい者に限っていない点で「バリアフリー」とは異なる。

UDタクシーマーク(レベル1)

国土交通省は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)に基づき、2012年3月に認定制度を設けた。乗降口や車いす固定スペース、手すりやスロープなどの基準をそれぞれ定め、使いやすい順に「レベル2」「レベル1」とし、車体に貼るUDタクシーマークもつくった。

今年4月にはレベル準1を追加した。レベル1、2と比較して、スロープの耐荷重や車いすのまま乗降できる乗降口の幅や高さ、車いすを固定するスペースなどの要件を緩和した。例えば、スロープの耐荷重はレベル1、2の300㌔㌘以上に対し、200㌔㌘以上で良い。

また、UDタクシーとして認定されるまでの間に、同一仕様の車両を登録していた場合は、その車両についても遡及(そきゅう)し、UDタクシーとして扱うことができるようにもした。

これまでにレベル準1として認定された車種はすべてトヨタ車だ。「シエンタ ウェルキャブ仕様タイプ1」と、助手席側ユニバーサルステップ(メーカーオプション)を装着した「ノア/ヴォクシー 車いす仕様タイプ1」だ。 この認定により、UDタクシーはトヨタ「JPNタクシー」、日産自動車の「NV200タクシーユニバーサルデザイン」(21年4月に生産終了)と「セレナユニバーサルデザインタクシー」の計6車種になった。

国交省がレベル準1を追加した背景には、UDタクシーの導入が三大都市圏に集中するなど地域格差が生じていることがある。

国や自治体の補助制度があるとはいえ、経営が厳しい地方の中小・零細タクシー事業者にとってUDタクシーの導入負担は重く、中古車市場に出回るUDタクシーを待つ事業者も少なくないという。シエンタ ウェルキャブ仕様タイプ1なら、車両価格が217万~308万円で、JPNタクシーと比べると約40万~120万円安い。

障がい者団体やタクシー事業者などから、車両後方から乗り降り可能で、スロープ操作が容易な車両のUDタクシー化を望む声が寄せられたことも国交省の背中を押した。同省は地方の導入状況を踏まえながら、必要があれば認定要領の見直しを再び行うことも検討している。

国内にタクシーは約21万台ほどある。国交省は、25年度末までに福祉タクシー(UDタクシーを含む)を約9万台導入することと、各都道府県におけるタクシーの約25%をUDタクシーとする目標を持つ。22年3月末時点で福祉タクシーは約4万3千台。このうち約3万台がUDタクシーだ。基準追加で目標達成に弾みをつけたい考えだ。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月27日号より