山梨県は25日、世界初となる電界結合方式による電気自動車(EV)へのワイヤレス走行中給電の実証実験を官民連携で開始すると発表した。電磁誘導の原理を技術ベースにコイルを利用した磁界結合方式と比べ、道路と車両に係るコストが安く、安全面と省エネ面でも優れているのが特徴。航続距離や充電環境などEVが抱える課題の解決につなげて、EVの普及など脱炭素社会への実現を図る。甲斐市内にテストコースを設けて実証実験を行い、2027年1月から社会実装を計画する。
山梨県と甲斐市、日本航空学園(甲斐市)、富士山の銘水(粟井英朗社長、山梨県富士吉田市)、富士ウェーブ(溝内竜士代表取締役、同)の5者が連携協定を締結して実証実験を行う。25日に都内で長崎幸太郎山梨県知事ら関係者が出席して事業発表と協定式を実施した。電界結合方式は、コンデンサと同じ原理を用いたもので、空間を隔て対向する金属板の間で電力を伝える方式。1台の高周波インバーターで、数十㍍を連続的に給電走行できるという。県などは実証実験のために、日本航空学園の敷地内にある滑走路を一部活用して、全長約500㍍の周回テストコースを整備する。
道路の左右に給電の電極となるステンレススチールを埋設し、周波数13.56㍋㌹の高周波インバーターを約40㍍ごと計13個設置する。給電電力は最大80㌔㍗。車両には車体下部に受電回路と車載電極となるアルミ板を搭載する。
ステンレススチールが敷設された路面上をEVが走行するとセンサーが感知し、配向現象を利用して給電を行う仕組み。EVが走行していない際、高周波インバーターは動いていない。道路から車両への給電効率が高く、走行中の電費が少なくて済むなど「EV普及への貢献度は高い」と、ワイヤレス給電技術の研究を行っている富士ウェーブの関係者は語った。コイルを用いた磁界結合方式と比べて、道路インフラや車載機器に係るコストが大幅に低減可能で、「10分の1以下」(同)を目指しているという。
実証実験を行うテストコースと見学センターなど関連施設に関する費用などは、富士山の銘水のグループ支援で賄う。初期投資は10~15億円を見込む。高速道路など一般道路での実証実験も26年度までに実施する。長崎知事は「実証実験を機に、県内で新しい産業を創出する端緒としたい」などと抱負を語った。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月26日号より