企業に化学物質の自主的管理を促す「化学物質排出把握管理促進法(化管法)」が来年4月に見直されることを受け、自動車産業にも対応が求められている。判断基準が従来の製造、輸入量から排出量へと切り替わり、国に排出量の報告が必要な物質も現行制度の1.2倍近い649物質に拡大する。完成車メーカーや大手部品メーカーは調達先の排出量を把握する必要もあり、中小企業を含めたサプライチェーン(供給網)全体での取り組みが重要となる。
化管法は、生産時などに工場から排出される化学物質の排出量を企業が把握し、国への報告を求める「PRTR制度」と、事業者間で製品を譲渡する際に化学物質の情報提供を義務付ける「SDS制度」の二つを柱としており、故意に報告を怠ったり、偽証した場合は罰則が与えられる。2023年4月から改正法の施行が予定されており、企業には新制度への対応が求められることになる。
今回の見直しによって、把握が必要な対象物質は現行の562から649に拡大される。判断基準も、製造・輸入量100㌧以上から排出量10㌧以上に変更される。現行制度の基準とは異なるため、事業者は新制度に則った物質の特定と把握が必要になる。
また、「事業者ごとに把握する物質量が増えることが見込まれる」(経済産業省担当者)ため、施行までの約半年でスキームを再構築することが必要になる。報告過程において調達先の排出量を加味する必要もあることから、完成車メーカーなどには取引のある部品メーカーの排出量を把握することも求められる。
制度の対象となるのは約3万事業所。自動車産業では、完成車、部品メーカーだけでなく、エアコンの冷媒フロンなどを扱う解体事業者や塗装作業を行う整備事業者なども一部対象となる。
新制度の周知徹底に向け、所管官庁である経産省は今秋から全国10自治体で説明会を開く。届け出作業の電子化も合わせて呼び掛けていく。新体制にスムーズに移行できる体制づくりを急ぐ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月16日号より