政府は約2兆円を投じる「グリーンイノベーション(GI)基金」で、製造業に用いる工業炉の脱炭素化を支援する。自動車部品の鋳造や鍛造の工程に使用する工業炉において、アンモニアや水素など燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション燃料の活用用途を探る。欧州連合(EU)や中国が自動車のライフサイクルアセスメント(LCA)全体でのCO2排出規制を検討しており、財政支援を講じることで、製造工程の脱炭素化を推し進める考えだ。
石炭などを燃焼させた熱を利用する「燃焼炉」と、電気エネルギーを熱転換して用いる「電気炉」の2つを支援対象とする。国内にある約3万7千基の工業炉のうち、4分の3が対象になるとみられる。
燃焼炉においては、アンモニア燃料や水素燃料を活用することで、利用時に排出されるCO2のクリーン化を進める。天然ガスなどとの混焼、専焼技術の開発に加え、製造する金属部品に影響が出ないよう企業との実機検証を行っていく。2032年までに50%の混焼技術の確立と専焼炉の実証を目指す。
電気炉では、炉の立ち上げ時などにアンモニア燃料や水素燃料といったゼロエミッション燃料を併用する「ハイブリッド炉」を32年度までに社会実装する。合わせて蓄電池やインバータなどを活用して電気炉全体の効率化を図る技術も開発する。
ダイカスト部品の製造や金属の鋳造、鍛造プロセスでは、工業炉を用いた加熱工程が不可欠となっている。一方、現在の製法では、EUが26年から段階的に導入を予定している「炭素国境調整措置」や、中国が25年に導入を見込む自動車のLCA規制に対応できない可能性も出てきており、工業炉の脱炭素化が急務になっている。GI基金事業で取り組むことで、官民一体で技術の確立を目指す。
具体的な補助金額などは今後詰める。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月22日号より