政府は13日、サプライチェーン(供給網)における人権尊重のためのガイドラインを策定した。ドイツや米国など、法制度化で先行する国との国際協調を重視し、グローバルで事業を展開する企業の経営リスクの低減につなげる。電気自動車(EV)の電池材料であるレアメタルの調達工程での人権侵害が危惧されている自動車産業でも、このガイドラインが一つの指標になりそうだ。
有識者を交えた検討会で議論を重ね、政府として初めて人権尊重に関するガイドラインを示した。ドイツでは国内に子会社や支店を置く外国企業に対し、人権侵害に対するリスク管理や方針書の策定を法律で義務付けているほか、その傘下のサプライヤーに対しても一定の人権に対する取り組みを求めるなど、欧米を中心に人権デューデリジェンス(DD)の取り組みが活発になっている。日本も国際水準のガイドラインを策定し、企業の事業活動が阻害されない環境づくりを進める考えだ。同ガイドラインには法的拘束力はないものの、原材料の調達から製品の廃棄までのサプライチェーン全体に対し、人権尊重に最大限取り組むことを求める。
企業に対して、調達先サプライヤーの労働環境や業務内容に、人権を侵害するような行為がないかを把握し、人権侵害が起きた場合の再発防止にも取り組むよう示した。また、自動車メーカーなどは直接取引があるティア1だけでなく、ティア2以下における人権保護施策に関しても把握する必要があるとした。
自動車産業においてはEV用電池の人権侵害が問題視されている。電池材料のコバルトの産出は、7割をコンゴ民主共和国に依存している。採掘現場では児童が働かされ命を落とすケースも多く、人命保護の観点から供給網を見直す必要がある。自動車、電池メーカーには、安定的な材料の確保と供給網の健全化の両軸での取り組みが重要になる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月14日号より