政府が国内のリチウムイオン電池工場の新設に巨額支援の実行を検討していることが明らかになった。カーボンニュートラル社会の実現に向けた機運が高まる中、自動車メーカー各社が電気自動車(EV)の開発を本格化しており、EVのキーデバイスであるリチウムイオン電池の需要拡大が見込まれている。政府の支援は日本のバッテリー関連企業の国際競争力強化を図るのが狙い。米国や中国でも政府がリチウムイオン電池生産能力の増強を支援している。
EVシフトによってリチウムイオン電池の需要はグローバルで拡大することが見込まれているものの、電池工場の建設には大規模な投資が必要。EVの普及拡大を図る各国政府は電池工場の新設に手厚い支援を行っている。日本のバッテリー関連企業はリチウムイオン電池の主要4部材である正極材、負極材、電解液、セパレーターで一定のグローバルシェアを持っていたものの、海外企業の積極的な投資によって全体的に低下傾向にある。
日産自動車も出資する中国系のバッテリーメーカーのエンビジョンAESCは今年8月、茨城県にリチウムイオン電池製造工場の新設を決定したが、国内にリチウムイオン電池製造能力を増強する動きは低調だ。トヨタ自動車が米国にリチウムイオン電池の現地生産を決めるなど、投資は海外市場が中心で、政府はEVに加え、再生可能エネルギーの蓄電にも有効利用できるリチウムイオン電池に関して日本の国際競争力の低下を招くリスクがあると判断した。リチウムイオン電池製造拠点の整備や、先進的なリチウムイオン電池部材などの研究開発に巨額支援を実行する方針だ。
政府は2035年に新車販売のすべてを電動車とする目標を策定している。また、ホンダは40年までに販売するすべての新車をEVと燃料電池車(FCV)とする方針で、リチウムイオン電池の国内需要は大幅に増える見込み。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)11月8日号より