政府は、水素・アンモニアの商用サプライチェーン(供給網)構築に向けた制度設計に乗り出す。既存燃料からの切り替えを促すため、水素は天然ガス(LNG)、アンモニアは石炭と同水準の価格での販売を目指す。水素は燃料電池車(FCV)や水素エンジンでの活用が見込まれ、アンモニア燃料は内燃機関の脱炭素化につながる。自動車産業の多様なカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)手法を後押ししそうだ。
水素やアンモニアは、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さないため、化石燃料に代わるエネルギー源として各国が研究開発に力を入れている。日本でも商用化に向けた供給網の具体案が議論されてきた。
水素とアンモニアを商用化する上で課題の一つが価格だ。例えば現在の水素コストは1ノルマルリューベ当たり約100円。1㌔㌘当たり約1100円になり、燃料電池車(FCV)の走行性能で比較するとハイオクガソリンと同等になる。政府は2030年に3分の1程度(30円)まで供給コストを下げることを目標に掲げるが、需給が見通しにくい足元の状況では、コスト削減が進みにくい。
このため、導入段階においては、実際の販売価格に当たる「参照価格」を、代替が見込まれる既存燃料の価格と同水準とすることを検討する。水素はLNG(液化天然ガス)、アンモニアは石炭の代替が見込まれる。運賃や保険料などを含んだ足元の原油価格(CIF)は、LNGが1リットル当たり165円、製鉄の原料となる原料炭は1㌔㌘当たり47円、発電用燃料などに使う一般炭は1㌔㌘当たり53円。これらの価格が一つの目安となる。
政府は、化石燃料の販売価格と水素やアンモニアの供給コストの差額を補助することも検討しており、需給双方の負担を軽減することで円滑な切り替えを促す考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)11月17日号より