政府は23日、「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)以上の自動運転車による交通事故の原因を調べる独立した専門調査機関をつくる方向で検討に入った。法的な責任割合の予見性を高め、自動車メーカーが自動運転車を普及させやすくしたり、迅速な被害者救済につなげる狙いがある。
自動運転車の社会的ルールのあり方を検討する有識者会議が、同日、開かれたデジタル行財政改革会議に検討の方向性を示した。詳細な制度設計や機関の設置時期は、国土交通省と警察庁などが検討を進める。
調査対象とするのは、運転手がいないレベル4以上の自動運転車による交通事故。一定の要件を満たした「レベル3」(条件付き自動運転)の事故も含める。自動車メーカーや自動運転サービスを提供する「特定自動運行実施者」などに、自動運転車や事故発生状況に関するデータの提供などの協力を義務づける。具体的な協力範囲はこれから詰める。
運行管理などの人為的なミスや、自動運行装置の保安基準不適合などが確認された場合は、これまでどおり行政処分や事案に応じた刑事、民事の責任を負う。しかし、国が定めた自動運転車の保安基準やガイドラインを満たし、事前に設定した「ODD(運行設計領域)」や関連法令などを守っていたにも関わらず事故が起きた場合、行政上、刑事、民事の責任をどう判断するかが自動運転車の事故における焦点だ。この点について、有識者会議は「自動車メーカーに対する行政処分はなし」との考え。ただし、必要に応じて再発防止に向けた対策などを求める。
刑事、民事の責任判断は最終的に裁判所が担うが、専門調査機関の調査結果や判断を活用できないかどうかも議論していく。
また、自動運転車による交通事故やニアミス情報などを集め、官民で共有する仕組みづくりを国交省と警察庁で検討する。分析結果を事故の再発防止につなげる。国交省は、こうした情報や、専門調査機関の判断結果などを、自動運行装置に関する保安基準やガイドラインの改定にも役立てていく。改定した保安基準などへの適合を自動車メーカーなどに求める仕組みも検討していく。
政府は、2025年度をめどに50カ所程度、27年度をめどに100カ所以上で自動運転移動サービスを実現する目標を持つ。ホンダは26年に、日産自動車は27年に自動運転サービスの事業化を計画している。政府としては、調査機関の設置で普及に弾みを付けたい考え。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月24日号より