政府は、2027年に国内初となる自動運転「レベル5」(完全自動運転車)の公道での実証実験を計画する。横浜市で半年間にわたって開催される「国際園芸博覧会(花博)」で行う。技術の普及目標を示す「官民ITS構想・ロードマップ」では、自家用車での「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)の実現時期を25年めどとしているが、レベル5に関しては定めていない。花博での実証で、完全自動運転の社会実装の可否を含め、技術の将来性を探っていく。
27年の3~9月に、元在日米軍基地で15年に日本へ返還された旧上瀬谷通信施設(横浜市瀬谷区)で開催する花博での実証実験を予定している。詳細は今後、政府内で詰めるが、周辺道路をレベル5の車両のみが走行できるようにし、完全自動運転車を用いた来場客の輸送などを検討する。国内の自動車メーカーやサプライヤーなど企業の参画を募り、公道での実証を半年間かけて行う。
自民党政務調査会内に設置した花博の特命委員会傘下に、新たに自動運転などに関するプロジェクトチームを設置した。関連省庁や博覧会協会の交通アクセス検討委員会と一体となり、法整備も含めた具体的な計画を今後詰めていく。25年頃をめどにアクションプランの策定を目指す。
限定された領域や条件内で完全自動運転を実現するレベル4に対し、レベル5ではどのような条件下でも完全にシステムが運転タスクを担う。レベル5の実現には、車両に搭載されるセンサーやシステム類の高機能化、5G(第5世代移動通信システム)の大容量・低遅延化といった通信技術の確立など技術面のハードルが高く、政府が掲げるロードマップでは実現時期を示せずにいる。
花博での実証実験では「レベル5の社会実装が本当に必要なのかも含めて方向性を吟味していく」(政務調査会関係者)考えだ。自動車産業にとっても完全自動運転車の可能性を模索する機会になりそうだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月22日号より