政府は、中小企業の賃上げと価格転嫁につなげる取引適正化の推進に向け、日本自動車工業会や日本自動車部品工業会などの各業界団体に「自主行動計画」の改定を要請した。中小企業庁が把握した取引上の課題の追記や、徹底が不十分と確認された項目について、具体的な行動方針や改善方策を示す「徹底プラン」の策定を求める。政府としては自主行動計画の実効性を高め、中小・小規模(零細)企業の経営や雇用の安定につなげたい考えだ。
中小企業庁は「取引適正化のための自主行動計画」を策定した約50の業界団体に対し、「下請Gメン」が把握した取引情報に基づき、団体ごとに取引上の課題や問題点を整理した。行動計画の改定や徹底プランの実行により、改善を促す。
政府はまた、物流業界の「2024年問題」を踏まえ、荷主となる業界団体の計画に「適正な運賃水準に配慮する」旨、追記するようにも求めた。2024年問題に関しては、6月上旬をめどに政策パッケージもまとめる予定だ。
各業界団体が自主行動計画で掲げる事項の中で、下請Gメンの調査結果から「順守が必要」とされた事項については徹底プランの策定を求める。具体的には①業界団体に所属する各社が共通して「絶対に実施しない事項」と「可能な限り実施する事項」を設定する②業界団体として責任を持って実施するためのプロセスを検討するなどだ。「価格転嫁率」など、業界全体の指標を決められないかどうかの検討も求める。中小企業庁は、こうした取り組みを支援するため、関係省庁の協力を得ながら、価格転嫁のモデル事例の収集・公表や、交渉を支援するための体制づくりを検討していく考えだ。
連合が3月24日に公表した23年の春闘回答集計によると、賃上げの動向は全体で3.76%。企業規模別では大企業が3.78%、中小企業(組合員数300人未満)が3.39%だった。22年やコロナ禍前の19年の集計結果(2.13%)を上回るが、賃上げのカギを握る価格転嫁率は28業種平均で46.9%と半数に満たない(22年9月の「価格交渉促進月間」フォローアップ結果)。業種や企業規模によってもバラつきがある。
業種別でみると「自動車・自動車部品」は43.0%と全体平均を下回り、順位は28業種中、20位だった。内訳別の価格転嫁率は「原材料費」が49.8%で全体平均を1.7㌽上回ったが、「労務費」は22.4%(全体平均32.9%)、「エネルギー」は23.9%(同29.9%)とそれぞれ伸び悩んだ。また「トラック運送」は27位で、転嫁率は20.6%と最も低かった。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月15日号より