政府は、電動商用車のエネルギーマネジメントシステム構築に乗り出す。タクシーやバスなど事業者ごとに電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの動力別に走行状態や出力情報を収集し、個別車両ごとに最適化を進める。これらのデータを、地図や気象情報と組み合わせてデータベース化することで、インフラを含めた商用車全体でのエネルギー効率の最適化も目指す。2030年までに1130億円を投じ、商用車の電動化を後押しする。
長距離輸送を担う商用車は、乗用車と比べて夜間の走行機会が多い。火力発電は昼夜を問わず安定的な発電が可能だが、今後、太陽光などの再生可能エネルギーが増えてくると、夜間の電力供給がまかなえないケースが出てくることが見込まれる。また、燃料電池トラックでは、水素タンクの容量が大きくなると積載効率の低下が懸念されるほか、大型車用の水素充てんインフラの数にも限りがあるため、エネルギー効率の向上が重要になる。
政府は、2兆円の「グリーンイノベーション基金」の一環で、商用車のエネルギー利用の最適化を図るプロジェクトを立ち上げた。バスやトラック、タクシー事業者を対象に、走行時の電池の出力情報や燃費・電費データ、積載情報などを収集しシステム化する。加えてエネルギーコストや二酸化炭素(CO2)排出量の最適化を図れる指標も設ける。30年までに3つ以上のユースケースでシステムの構築を目指す。
また、これらのデータを地図情報や交通情報など外部データと組み合わせることで、走行車両の周辺情報やインフラ網を含めたエネルギーシミュレーションを行える基盤も構築する。リアルタイムの道路環境などを踏まえることで、運行ルートの最適化を図ることができる。
30年までに実証を進め、早期の社会実装を目指す。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月16日号より