政府は、高速道路でのトラックの自動走行「レベル4(特定条件下における完全自動運転)」の普及に向けたロードマップ(工程表)案をまとめた。2026年度以降の具体的な指標を初めて示した。早ければ26年度から関東~関西の全区間で保安要員が同乗して走行を始め、30年度以降には保安要員が不要な「無人走行」ができるようにする。35年度以降には上り・下り車線合わせて600台超の走行を見込む。複数の車両が近接して走る「隊列走行」を含め、物流業界のドライバー不足を自動運転技術で補完する。
近く開く「自動走行ビジネス検討会」の審議を踏まえ、4月にも工程表を公表する。
政府は「官民ITS構想・ロードマップ」で、25年以降に高速でトラックのレベル4走行を目指す方向性を示しているが、具体的なめどは明記していなかった。新たな工程表では、25年度までに実証を終え、26年度から社会実装のフェーズに入る。26年度~29年度を「黎明(れいめい)期」、30年度~34年度を「普及期」、35年度以降を「成熟期」と位置づけ、それぞれの時期で必要な技術や制度設計の方針を示す。
走行区間は、26年度からの関東~関西全区間を皮切りに、35年度以降は関西以西へと広げる。走行台数も黎明期は大手物流事業者を中心に10~50台にとどまるが、成熟期からは上り下り車線で各300台超に増やす。黎明期までは本線上で自動・手動を切り替えられる仕様とするが、普及期以降は、物流施設や「中継エリア」といった出発地と到着地に切り替えを限定し、保安要員が原則、同乗しなくても走行できるよう制度設計を進める。
レベル4走行を実現するため、普及期以降は車両情報や速度制限情報に加え、天候や渋滞、事故情報といった走行に必要な情報もあらかじめ入手し、制御に反映させる技術の開発も進める。
長距離輸送に使われる大型トラックの平均使用年数が10年超(15年で16・12年)という背景もあり、レベル4の自動走行車が普及し始めるのは30年度以降になる見通し。それまでに法整備やインフラの設置、データプラットフォームの構築などを行う必要がある。工程表でステップを示し、官民でレベル4の社会実装を目指す。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月17日号より