政府は、2024年度予算のグリーントランスフォーメーション(GX)関連概算要求案で、電気自動車(EV)などの電動車や事業者向け充電設備の導入支援に約1400億円を計上した。省庁横断で運輸部門の脱炭素化と自動車産業の競争力強化に向けた政策を一体的に展開し、電動車市場の拡大と50年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)実現を目指す。
このほど首相官邸で開いた「GX実行会議」(議長=岸田文雄首相)で示した。24年度予算のGX関連概算要求総額で複数年度分を含め、約2兆円超となる。
各国の制度・技術動向を見据えた複数年度にわたる予算要求とし「研究開発」「実装」「市場拡大」の各領域でGXの技術や製品に関する民間投資を促す。
GX市場拡大の領域では、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)の導入支援に1417億円を求める。自家用と事業用が対象で、トラック・バスなどの運送事業者を対象とした基礎充電設備の導入支援も含めた。
EVなどを対象とした「クリーンエネルギー自動車購入支援」(CEV補助金)と充電・充填インフラ整備を展開している経済産業省は今年度、支援対象となる次世代乗用車の購入に対し、最大85万円を補助している。今年度の補助対象は約12万台分だが、24年度は5万台増の17万台分を見込む。
GX関連の要求総額は2兆円超。このうち24年度予算は「GX経済移行債」などを活用した投資促進策として約1兆2千億円を見込む。具体的には、研究開発領域でGX分野のディープテック(先端技術)・スタートアップ育成支援に407億円(5年で2034億円)を投じる。実装領域では、水電解装置や蓄電池など「革新的脱炭素製品」の国内サプライチェーン(供給網)構築支援に7207億円(5年で1兆2千億円)を確保する。
要求段階で金額を明示せず、事業項目だけで要望する「事項要求」には、水素・アンモニアのサプライチェーン構築に向けて、化石燃料との価格差を相殺する支援なども盛り込んだ。具体的な施策や金額は今後詰める。
岸田首相は会議で「21世紀前半のわが国の経済力を大きく左右するとの認識をもって政府を挙げて取り組んでいく」と語り、暮らしや産業、金融など主要分野別の投資戦略について、具体的な支援内容などを年末にかけてまとめるよう関係閣僚に指示した。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月26日号より