電気自動車(EV)の充電インフラの整備目標を政府が見直す可能性が浮上してきた。公共用と特定メーカー専用の2通りある充電網のバランスを考慮したり、電力系統への影響を抑えながら充電器の高出力・複数口化や商用車対応を進めるためだ。経済産業省は23日に自動車メーカーや充電事業者を集めた会議を開いて議論を始め、今夏にもロードマップ(工程表)案をまとめる考えだ。
会議では、2030年に向けた充電網整備目標のあり方を改めて議論する。政府は21年6月に公表した「グリーン成長戦略」で「30年までに充電インフラ15万基(うち急速充電器3万基)」を目標に掲げた。その後の電動車の普及ペースや、米テスラやフォルクスワーゲングループなど非公共充電網の整備計画、新たに参入を表明した充電事業者や商用車の充電ニーズなどを踏まえ、整備のあり方や目標を議論することにした。
会議ではこのほか、従来から整備を進めてきた高速道路に加え、集合住宅や旅館・ホテルなどへの設置方針も話し合う。充電器の満空情報や故障を把握できるよう、遠隔制御機能の必要性についても議論する方針。
今後、普及が見込まれる商用車向けの充電設備では、混雑を減らし、車両の稼働を最大化できるような工夫や、電力系統に過大負荷をかけないような仕組みを検討する。充電器周辺のバリアフリー化にも取り組みたい考え。
課金方法も議論する。日本では現在、充電時間に応じて課金する「時間制料金」が主流だが、高出力化が進めば事業者のコスト負担が増したり、外気温などによって左右される充電量に対する不満が大きくなる可能性がある。このため充電量に応じて課金する「従量制課金」の導入に向けた制度設計なども視野に入れる。
自動車メーカーのほか、充電事業者や高速道路会社、観光団体、商業施設、住宅関連など幅広い業界と議論し、今夏にも工程表案をまとめ、パブリックコメントなどを経て今秋に正式決定する予定だ。
(2023/6/23修正)
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月22日号より