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自動車業界トピックス

整備人材の育成、教える側の前提を取っ払う

国籍に関係なく育つ環境整備を

整備人材の育成において、教える側が自らの経験に基づいた指導が難しくなっている。若い世代とは年齢差や時代背景による考え方などのギャップが大きく、外国人とは生まれ育った国の価値観の違いもある。彼らを理解した上で、仕事を伝えるために必要なことは何か。人材育成に携わる企業や自動車整備士の養成校の関係者に聞いた。

若い人を教えるためにはまずは彼らの考えを受け入れる必要がある(東京工科自動車大学校提供)

人材教育事業を手掛けるメイン(佐々幸恭社長、東京都港区)の山尾百合子名誉会長は、若い人を教えるに当たって大事なことを「私たちの経験を押し付けないこと」「彼らの価値観を受け入れる姿勢が必要」としている。教える側が経験したことは教わる側にとっては昔話として受け取られ、今の実情に合わないことも多いからだ。山尾氏は「経営者や店長は、ひとまず現状を受け入れないといけない時代になった」と、環境の変化も指摘する。

日産栃木自動車大学校(中村光之校長、栃木県上三川町)で教員を務める髙橋真氏は、学生と接するには「教える側の前提を取っ払うことが大事」と訴える。髙橋氏は学生に気持ちよく勉強してもらうため、「話し方や教材の出し方も工夫している」という。東京工科自動車大学校中野校(東京都中野区)の佐藤康夫校長も、「整備の仕事に興味を持たせる授業を行っている」としている。整備に使う工具を触ったことがない学生が増えているためで、学生の関心を高めることで、企業が求める人材のニーズに応える考えだ。

また、最近増加している外国人の育成は、言葉の問題が最初の壁となることが多い。日産栃木自大で留学生を教える石郷岡崇氏は、「日本語が苦手な子でも、相談できる人間関係や場所をつくることが重要」と話す。授業でも留学生の日本語能力を高める方法を追求している。東京工科自大でも、日本人と外国人が同じ教室で授業を受けるようにしている。佐藤校長は、「これから日本人と外国人が同じ職場で働くことが一般的になる」とみており、学生のうちから一緒に勉強することで、コミュニケーションを深められるようにしている。

オートバックスセブンの子会社で人材教育を手掛けるチェングロウス(東京都江東区)の関口秀樹社長は、今後の外国人の育成に必要なことについて、「外国人へのアレルギーの払しょくと偏見の排除」を挙げる。関口社長は「外国人を安い労働力との誤った認識を持つ経営者がいる」として、国籍に関係なく人が育つ環境を整えることの必要性を説く。

整備事業者も人材育成への模索が続く。車検や整備などを行うアスドリーム(大田勝彦社長、茨城県鹿嶋市)はかつて、社員を採用しても定着しなかったことがある。この反省から、人材育成に本格的に取り組むとともに、休日や労働時間などの労働条件を見直すことで、改善につなげた。現在は、日報と担当する仕事の習熟度を数値化したスキルマップに基づき指導している。その日の業務の振り返りを上司と対面で行い、連携を深める。また、昇進に必要なスキルを全社員に開示し、意欲を高める。外国人の整備士も同じ方法で育成している。大田社長は「まだ十分ではないが、(育成の)蓄積はある」と、次を見据えている。

◆月刊「整備戦略」2024年4月号で特集「自動車整備 人材育成に必要なこと」を掲載します。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月25日号より