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自動車業界トピックス

連載「4月1日から特定整備~整備事業者の進む道~」(1)特定整備の概要

整備業界が迎えた「大変革」 先進安全自動車の点検・整備担うために

4年の経過措置 対応できねば退場も

特定整備制度の開始まで1カ月を切った。4月1日に改正道路運送車両法が施行され、先進運転支援技術のみならず、自動運転車の点検整備を見据えた特定整備制度が導入される。国土交通省は整備事業者の準備期間として4年間の経過措置を設けるが、対象となるためには3月31日までにカメラやミリ波レーダーのエーミング(校正作業)を1件でも行い作業記録などを残す必要がある。「特定整備に対応できなければ将来的には退場を求められる」(有力整備事業者)ほどの岐路に立たされている状況だが、整備事業者の温度差は極めて大きい。自動車整備業界が迎えた大変革のとき。特定整備は整備業界、そして事業者に何をもたらすのだろうか。(計4回連載)

自動運転も見据えて

まずは特定整備制度の概要を改めて紹介する。今回の車両法改正は自動運転の実現に向けた法制度を整えることが目的。国は自動運転車の開発を促し、実用化と普及を後押ししながら、メーカーの設計・製造段階からユーザーの使用段階において、自動運転車の安全性を一体的に確保するための法制度として4月1日に施行する。

特定整備は、緊急自動ブレーキやレーンキープアシストなどを装着した車両、そして今後登場する自動運転車(レベル3以上)の使用段階における安全性を確保するための制度となる。具体的には、従来の分解整備の対象だった原動機や制動装置など7つの装置に、自動運転の実現につながる「自動運行装置」を追加するとともに、カメラやミリ波レーダーなどの取り外しを伴わず、作動に影響を及ぼす整備、改造にまで定義を拡大。さらに名称を「分解整備」から「特定整備」に変更する内容となっている。

電子制御装置整備認証

そして、新たに特定整備の対象作業「電子制御装置整備」となるのが、エーミング、カメラやミリ波レーダーが装着されたフロントバンパー&グリルの脱着とフロントガラスの脱着だ。これらの作業を行うための新たな認証資格が「電子制御装置整備認証」となる。

認証パターンは現在の分解整備だけを行うパターン1を含めて3つ。電子制御装置整備だけを行うパターン2、分解整備と電子制御装置整備の両方を行うパターン3を想定している。パターン2は車体整備事業者や補修用ガラス事業者、フルパッケージとなるパターン3はディーラーや専業整備工場の取得を見込んでいる。

特定整備制度は4月1日から始まるが、国交省は整備事業者が電子制御装置整備認証を取得するための準備期間として、2024年4月1日まで4年間の経過措置を設ける。ただし、経過措置が適用されるのは「改正法の施行の際に行っていた作業の範囲」に限られる。言い換えると、3月31日までにエーミングを行っていれば、4月1日以降はエーミングを含めた作業が経過措置として認められる。

取るべき行動は明白

一方、エーミングを行っていなければ、4月1日以降にエーミングが必要な車両が入庫しても、電子制御装置整備認証を取得しなければエーミングが行えない状況となる。

ただ、国は分解整備事業の認証を受けた場所と離れた場所も同一事業者の事業場として認め、電子制御装置点検整備作業場などを他の事業者と共用することも認めており、新たな認証資格を取得しやすい環境も整えている。

保安基準適合証を交付する指定工場については、4年どころか1年半の猶予しかないとも言える。法施行から1年半後の21年9月には新たな点検基準が施行される予定。指定工場が経過措置の対象となっていなければ、その時点から特定整備対象車の保適証交付ができなくなるからだ。3月31日までにエーミングをしているか否かで4月1日以降、そして21年9月以降の事業活動の範囲に制限がかかる可能性もある。

特定整備制度のスタートまであと27日。これまで通り、分解整備しか行わないのであれば何も変わることはない。ただし、今後も普及拡大が続く先進安全自動車の点検整備を担うのではあれば、整備事業者が取るべき行動は明確になっていると言える。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)3月5日号より