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自動車業界トピックス

整備業界で広がるSNS活用 先駆者に聞くやり方と注意点

便利な半面 意外な落とし穴も

SNS(会員制交流サイト)や動画共有サイト「ユーチューブ」などを活用して情報や思いなどを自由に発信できる時代になった。自動車整備業界の中にもそれぞれの立場から整備の技術や情報、会社の取り組みなどを発信する整備事業者やエンジニアがいる。彼らが発信の際に留意している点やSNSの活用の仕方などを聞いた。

森本さんの動画撮影

柴田自動車(岐阜県坂祝町)の柴田達寛社長は、1997年から日々のことをインターネットで発信し始めた。まだネット自体が普及し始めた時期で、ブログやSNSがまだ存在しない頃に、入庫した車の作業の様子を写真と文章で公開するなど、いち早く情報発信に乗り出した。今も「1日18時間はインターネット上にいる」という。

自動車整備ユーチューバーの森本慎也さんも、ブログで自動車整備に関する技術や豆知識を発信してきたのが出発点だ。ただ、森本さんは文章を書くよりも「しゃべる方が早いし分かりやすい」と発信をユーチューブにシフト。整備の作業手順や車の部品などを分かりやすく伝えることに努めている。

一方、情報発信による〝マネタイズ(収益化)〟に取り組むのが、長野県千曲市の車体整備事業者Y’sボディーだ。同社の小林洋平代表は板金塗装(BP)が売り上げのほとんどを占める状況に危機感を持ち、当時インターネットで言われていた「ブログで稼ぐ」ことに着目した。現在は使用した整備機器や道具のレビューを投稿し、車体整備事業者の購入を促す「インフルエンサーマーケティング」などを行う。

小林代表は情報発信を通じて、整備機器などのメーカー・販売店、BPの現場の「三方良しを成し遂げたい」とする。そこに必要なのは「目的」「マネタイズ」の2つだけだという。目的がなければ発信を続けることは難しく、マネタイズしなければ資金が底を尽くからだ。

発信する媒体について森本さんは「情報を発信することに限れば、SNSでもホームページでもいい」と話す。自身は登録者数22万人を超えるユーチューバーだが「自分にはたまたま(ユーチューブが)合っていただけでハードルは高い」と話す。

柴田社長と小林代表は会社のブログのほか複数のSNSを目的や内容、ユーザー層などから使い分けている。小林代表はフォロワーが多い「インスタグラム」で商品の紹介や仕事の様子を見せ、「ツイッター」は自分の行動とそれに関連したことを発信する。

柴田社長は「SNSをやるならSNSの仕組みを勉強しないと」と言い切り、そのためには「インターネットの世界に住むしかない」と続ける。ネット上には大小さまざまなコミュニティーがある。姿は直接見えなくてもさまざまな人間が集まり、そこには一定のルールが存在する。SNSを使って発信する際はそのことを理解してコミュニケーションをとらないと受け入れられないというわけだ。

発信した内容が思わぬ批判を浴びる〝炎上〟に対して柴田社長は「あったことだけを書く」ことがポイントだとする。SNSで一番やってはいけないことは「うそをつくこと」(柴田社長)。それが発覚しただけで信用がなくなるからだ。

SNSやユーチューブは不特定多数が見る以上、発信者の〝アンチ〟が出る可能性もある。森本さんが投稿した動画のコメント欄には感謝の言葉が並ぶ。一方で、「悪口が一つ書かれていたらその方が目立ってしまう」とも。そのため、「アンチの言動には反応しないようにしている」という。

◆月刊「整備戦略」2023年7月号で特集「情報発信力≧技術力~動画・SNS活用術~」を掲載します。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月26日号より