半導体不足やコロナ禍のサプライチェーン(供給網)の混乱が、整備業界にも影響を与えている。純正部品など補修部品の一部に供給の遅れが発生し、修理期間が長期化しているケースが見られる。リサイクル部品で対応できることもあるが、使用済み自動車の引取台数の減少で在庫が少なくなっており、関係者を悩ませている。新車向け部品と同様に、補修部品の供給問題はしばらく続くことが予想されており、整備各社では早期の部品生産の正常化を望む声が大きくなっている。
今年に入り、整備関係者から補修用部品の供給遅れを指摘する声が聞かれるようになった。該当部品はバンパーやヘッドライト、ハーネス類などで、納期に1カ月から数カ月かかっているという。また、先進運転支援システム(ADAS)の進化で、電子制御装置(ECU)の搭載数が増えているが、これも入手しにくい車種が発生している。
複数の車体整備事業者は「部品の入手に1カ月かかると言われたものの、2週間で届くこともあるため顧客に正確な納期を伝えることができない」と口をそろえる。事故で大破した車両など通常1カ月程度で納車できる修理が、2~3カ月かかるケースも出ているという。こうなると「代車特約(任意保険)は30日までしか対応できない」問題も起き、「無料の代車で対応せざるを得ない」と余計なコスト負担も発生している。
今年1月から2月にかけての豪雪や6月のひょう害などで、バンパーや車体が損傷した車両が多数発生した。修理を望むユーザーは多いものの、「走行に支障が無いユーザーにはそのまま乗ってもらい、部品が届いてから対応している」と、顧客を待たせている状況にため息をつく。
リサイクル部品事業者には、ディーラーからの問い合わせが増えているという。大手リサイクル部品事業者は「パワーウインドーのレギュレーターやLEDヘッドライトなど、納期短縮のためにリサイクル部品を購入したようだ」と語る。一方、使用済み車の減少でリサイクル部品を生産できる車両が少なくなり、在庫点数にも限りがでている。このため、ある整備事業者は「リサイクル部品を探していても、取り合いになり購入できなかった」と明かす。
さらに、大型車整備の現場は深刻だ。部品が届かずに「数カ月も整備工場の車両置き場に保管している車両がある」(整備事業者)という状況に陥っているケースもある。こうした中でも「半導体不足の報道が過熱する影響で、顧客から納車が遅いなどのクレームはない」とし、ユーザー側にも補修部品の供給遅れへの理解が広まっているようだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月22日号より