政府が緊急事態宣言の延長によって業績悪化に直面している事業者の支援強化に乗り出す。新たに設ける「一時支援金」は当初計画よりも支給額の増額を決定。企業の新分野への進出などを後押しする「事業再構築補助金」も新設するが、「通常枠」でのサポートに加えて補助率を引き上げた「特別枠」も設定する。継続する「持続化補助金」でも、感染防止対策費の補助上限を高めた特別措置を導入する。政府はそれぞれ3月に申請受付を開始する予定。政府は長引く新型コロナウイルスの感染拡大で、自動車を含めた疲弊している多くの事業者の存続につなげる狙いだ。
一時支援金はこれまで法人が最大40万円、個人事業主を同20万円としていたが、それぞれ同60万円、同30万円に引き上げる。宣言の発令地域で不要不急の外出や移動の自粛による直接的な影響を受けた事業者などを対象としており、人流の減少で業績が悪化しているタクシー事業者などからの申請も想定している。
要件は今年1~3月のいずれかの月の売上高が、半減していること。しかし、昨年3月にはすでに新型コロナの影響が業績に出ていたと想定されるため、比較対象は前年同月だけでなく、前々年同月実績のどちらかを選べるようにした。今回の宣言延長による業績悪化の理由を説明できることも条件となる。まもなく終了する「持続化給付金」と似た支援策となるものの、ターゲットを絞った対策で事業者支援の実効性を高める。
一方、事業再構築補助金はコロナ後を見据え、新分野への進出や業態転換など新たな成長基盤づくりに取り組む中小企業や中堅企業をサポートする。中小企業の「通常枠」では上限6千万円(補助率3分の2)の支援が受け取れる。通常枠内に設ける「卒業枠」は中小から中堅へのステップアップを促すもので最大1億円(同)を補助する。事業計画の策定が必要となるが、申請前6カ月間のうち、任意の3カ月の売上高合計が10%以上減少していれば申請が行える。採択企業には付加価値向上の達成などを求める。
さらに、今回の緊急事態宣言を受けた措置として特別枠も設ける。補助上限は従業員数に応じて500万~1500万円となり通常枠に比べると少ないものの、補助率を中小企業で4分の3に引き上げている。要件は通常枠のものに加え、今年1~3月のいずれかの月で売上高が、前年同月ないし前々年同月に比べて30%以上減少していること。事業を統括する中小企業庁では、補助率が大きい特別枠の申請が多いと見ている。このため、申込みが集中したことで同枠が不採択になっても、自動的に通常枠で再審査する仕組みとし、より多くの事業者を支える制度設計を目指す。
今回の緊急事態宣言の延長では対象地域から栃木県が除かれた。しかし、中企庁では「一旦指定された所は(回復までに)ラグが生じる」ことを見越し、同県もいまだ対象となる10都府県と同様に取り扱う方針。今後、期限までに宣言が解除された都府県が出ても、同じ取り扱いとする。先の宣言地域である11都府県と、業績悪化の因果関係があれば、宣言以外の地域からの申請も可能。人やモノの流れが妨げられる影響を受けている自動車関連事業者にとっても事業の継続や雇用の維持の支えになりそうだ。