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自動車業界トピックス

新車減産がリサイクル業界にも影響

使用済み車の入庫激減 仕入れ価格上昇、部品輸出停滞

半導体不足などによる新車の減産の影響が、自動車リサイクル業界にも及んでいる。自動車リサイクル事業者の使用済み自動車の入庫台数はこの数カ月で大きく減少。事業者からは「平時と比べて半減した」との切実な声も出ている。加えて、資源価格の高止まりによる仕入れ価格の上昇、新型コロナウイルス感染拡大を受けたリサイクル部品の海外輸出の停滞など、各社を取り巻く環境は一段と厳しくなっているのが実情だ。一方、国内のリサイクル部品の需要は一定数を維持している。リサイクル部品の活用による二酸化炭素(CO)排出削減効果は実証されている。さらに利用率を高めていくため、認知度を引き上げる取り組みも進みそうだ。(東北支社・秋田 憲作、梅﨑 信孝)

リサイクル部品活用はSDGsの取り組みに貢献

■中古車需要の変化も使用済み車に影響

自動車リサイクル事業者の間では、使用済み車の引取台数の減少が続いている。新車販売台数の減少に伴う下取り車の発生減が大きな要因だが、これに中古車需要の高まりが拍車をかける。大手リサイクル事業者の役員は「ディーラーでも、本体価格が20万円台の中古車を店頭に並べるようになった」と指摘。これまでは商品化しなかった車も中古車として小売りするようになったことで、使用済み車の発生が少なくなっている。

さらに、別の大手リサイクル事業者の役員は「昨年末から、使用済み車の入庫台数確保の競争が激化してきた」と訴える。リサイクル工場の稼働率を維持するために、高値でも使用済み車を引き取る事業者が出ているためだ。こうした実情もあ

リサイクル部品の需要が高い車種の仕入れに特化

り、事業規模に関わらず使用済み車の入庫台数は、通常時と比べて「3~4割減った」、「半減した」という声が相次いで聞かれるようになった。

また、資源相場の高騰も頭痛の一つだ。鉄、アルミ、銅、パラジウムなどの相場は高値で推移している。使用済み車の価格は素材価格を含んだ金額となっており、仕入れ価格が上昇する要因になっている。こうした市場環境と並行して、「中古車相場の上昇を受けて、これまで直接入庫していた低年式車を中古車オークション(AA)に出品するケースがあり、車両不足に拍車をかけている」(自動車リサイクル企業の代表者)ことから、品不足が深刻になっている。

こうした中、別の自動車リサイクル企業の代表者は資源相場を好機と捉えて「こ

時間をかけて精緻に解体

れまで以上に精緻な解体を行い、細かく部品を分別する」ことで売上確保に努めるなど対策を強化している。

海外向けの部品輸出もコンテナ不足や輸送費の高騰が影響し、コスト上昇を招いている。コロナ禍で外国人バイヤーが入国できない状況となっており、「バイヤーが居ないため、部品取り作業にも影響が出ている」(大手自動車リサイクル企業代表)としている。

足元で急速に広がる新型コロナウイルス感染者の対応にも課題が残る。事業者の中には、フロントや事務のスタッフをテレワークに切り替えたケースがある。一方、リサイクル部

再利用可能な部品を丁寧に生産

品の販売点数の多い事業者は「フロントマン1人当たりのパソコンの使用台数が3台で、自宅へのパソコンの設置や通信環境の整備を考えると、テレワークに移行できない」と苦しい胸の内を語る。加えて、問い合わせに対する電話やファクスでの返答も多いことから、テレワークの導入にはハードルが残っている。

■リサイクル部品の利用率拡大の好機に

国内のリサイクル部品販売は、これまでも景気動向に左右されず一定の需要を維持してきた。コロナ禍でも「低年式車を直して継続して使用する傾向が高まり、機能部品や外装部品などの引き合いは高い」という声が複数聞かれる。しかし、需要が多い車種の部品に注文が集まるため、リサイクル部品として在庫してもすぐに売れてしまい、注文に対応できないこともあるという。

厳しい環境下だが、チャンスと捉える声もある。引き合いの多いリサイクル部品販売の需要獲得のため、高年式の全損車両を取り扱うオークションを活用し、リサイクル部品需要の高い車種の仕入れを通じて、さらなる需要獲得への動きが見られる。ディーラーやAAからの入庫に加え、個人からの使用済み車の車両獲得向け、動画配信サイトへの広告出稿や自社ホームページの刷新に取り組む事業者も出ている。各社が視野を広げて、自動車リサイクルに関する認知拡大を進めている。

さらに、環境問題と自動車リサイクル部品をひも付けたPR活動も重要となっている。政府目標のカーボンニュートラルの達成や「SDGs(持続可能な開発目標)」の実現には、環境対応が必須となる。自動車リサイクル部品の利用拡大は、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からCO排出削減効果が学術的に実証されている。自動車業界では、SDGsの取り組みが急速に進んでおり、自動車リサイクル部品の活用が一層広まる契機となる可能性も高い。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)2月7日号より