日本電産は、電気自動車(EV)の駆動モーターシステム「eアクスル」に使用するパワー半導体の内製化を検討する。世界的な半導体不足によって自動車の減産を余儀なくされるなど、半導体調達リスクが高いと判断した。ルネサスエレクトロニクス出身で、ソニーグループ執行役員の大村隆司氏を2月1日付で日本電産の半導体開発担当の執行役員として迎え入れ、半導体メーカーの買収も視野に入れる。同社はEV向け駆動用モーター市場が今後成長するとみており、需要急増に迅速に対応できるよう関連部材や工作機械の内製化を推進する。
駆動用モーター、インバーター、減速機で構成するeアクスルに使用されるパワー半導体は効率や性能に大きく関係する重要な部材だ。半導体不足で世界中の自動車メーカーが生産調整するなど、同社が注力するEV向け駆動用モーター関連事業で将来的に半導体調達がリスクになりかねないことから、内製化を探る。グループのエンジニアを集めての内製化や、半導体メーカーの買収も視野に大村氏が中心となって検討する。
日本電産は約5年前、半導体大手のルネサスの筆頭株主である産業革新機構が保有する株式の売買禁止が解除されてからルネサスの買収に動いたものの、途中で断念した経緯を持つ。
同社は成長ドライバーと位置付けるeアクスルを安定供給するための体制を整えている。昨年にはeアクスルの主要部品であるギアの生産設備を安定的に確保することを目的に三菱重工工作機械を買収した。「半導体を内製化できれば、社内ですべてそろう」(永守重信会長)としている。製造するための工作機械を含めて外注を減らし、グループ内で調達できる体制にすることで、急激な受注増加にも柔軟に対応できるように備えて、EV向け駆動用モーター市場で主導権を握る構えだ。
EV向けeアクスルの受注はすでに右肩上がりだ。中国で日本電産のeアクスルを搭載したEVの販売台数は昨年12月には前年同月比2倍以上の2万4千台にまで増えている。また、中国でのeアクスルの受注台数は2022年1~3月に10万台、22年度(22年4月~23年3月)には70万台を超える見通し。eアクスルを製造するステランティスとのフランスの合弁工場も22年6~9月期に操業する予定で、生産能力の増強を急いでいる。
EVの本格普及を見据え、eアクスルの生産能力増強には今後3年間で3千億円を投じる計画だ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月28日号より