日産自動車は5月31日、下請法違反を繰り返しているとの一部報道を受けての社内調査結果を公表した。試作品メーカーに対し原価低減目標を示したフォーマットがある事実などは確認されたものの、下請法などの法令違反は確認されなかった。日産の内田誠社長は「取引先から(強引な値引き要請などの)声があがっていることが問題」と述べ、困りごとの相談を受け付ける部署の新設など、サプライヤーとの関係改善を図る方針を示した。
日産には今年3月、公正取引委員会から下請法違反の勧告を受けた後にも、取引先に不当な減額を強要していたとの一部報道があった。これを受けて、弁護士などの第三者が社内調査を実施した。同日、横浜市の本社で会見した内田社長は「国や業界をあげて適正取引徹底の取り組みを進める中、こうした報道がされ、各方面から厳しい声が上がっていることを大変重く受け止めている」と述べた。
日産では、サプライヤーとの関係改善に向けて対策をまとめた。まず、下請法違反が勧告された部品購入代金の「割戻金」については、下請法の対象外の大手サプライヤーを含め廃止。さらに、取引に関する問題や相談を匿名でも応じるホットラインを設置する。ここで受け付けた情報に法令違反など問題がある場合は、購買部門に提言する。
合わせて「パートナーシップ改革推進室」を新設。ものづくりや取引に関する法令に詳しい人員を20人ほど配置し、取引先の一次サプライヤー約2千社に直接出向き困りごとの相談に乗るほか、日産への要望も社内に持ち帰り検討する。同室に持ち込まれた案件は上位組織のパートナーシップ委員会でも論議し、スピーディーに対応する方針だ。内田社長はサプライヤーとの関係を再構築して「不満の声が出ないように徹底的に取り組む」と宣言した。
一方、日産は下請法違反への勧告に関する社内調査結果と再発防止策を6月末までに策定し、関係当局に提出する。監督責任を明確化するため、内田社長は4月から3カ月間、報酬の30%を自主返納することも明らかにした。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)6月3日号より