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自動車業界トピックス

日産、自動運転サービスの実装急ぐ 2024年度内にもパッケージ化

実証通じてエコシステム構築へ

本社周辺を走行する実験車両

日産自動車が自動運転サービスの実装に向けた体制整備を急ピッチで進めている。同社は2027~28年度に有償の自動運転サービスを複数の市町村で展開する計画で、配車や車両の保守などをパッケージ化した仕組みを24年度内にも構築し、25年度から実証を通じて運用方法などを検証していく。国内では、人手不足による公共交通機関の減便や廃線、さらに高齢者の免許返納なども重なり、地方を中心に移動に関する制限が懸念されている。同社はパッケージ化した自動運転サービスを構築することで、将来の無人運転サービスの実現につなげていく考えだ。

車両開発では、25年1~3月期中に電気自動車(EV)「リーフ」をベースとした自動運転「レベル2」(高度な運転支援)の実験車で横浜市内の本社近隣を走行し、走行データ

車両天井に搭載したカメラなどで障害物を検知する

の収集や課題の洗い出しを行う計画だ。この実験車両には、カメラ14台、レーダー10台、LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)6台を屋根などに設置。これまで取り組んできた自動運転車に比べて搭載個数を増やしたことで、高精度な検知が可能となったという。実際に試乗すると、スムーズな加減速や右左折、車線変更などを自動運転で実現しており、さながら運転の上手な上級者のような安心感と快適な乗り心地だった。

このリーフを用いた24年度の実証の後、25~26年度には「セレナ」ベースの自動運転車両を最大20台用意し、一般の乗客を乗せて無償サービスを開始。エリアは横浜駅~石川町駅を予定する。その後、27~28年度には有償サービスを開始し、エリアは横浜に加えて3~4の市町村に拡大する。台数は数十台規模となる見込みだ。

セーフティードライバーは乗車するが車両は自動運転する

車両の自動運転技術は、27年度以降の有償サービスに向けて実証を重ねて進化させていくが、土井三浩常務執行役員は「車(ができている)だけではいけない」と強調する。自動運転のサービス化に向けて同社がこれから取り組むのがエコシステム(生態系)の構築だ。自動運転サービスでは、車両の遠隔監視や配車システム、車両管理システム、ユーザーが使うアプリ、車両保守、駆けつけサービスなど、車両技術以外にもさまざまな仕組みが必要となる。

エコシステムは24年度に概要を固め、25~26年度に無人での運行を想定した仮説を立て、それぞれの役割や運用などを検証する計画だ。現在はシステムを構築するパートナー企業などと相談を重ねているという。

土井常務は「モビリティサービスは公共交通なので、絶対に途中でやめてはいけない。コストも含めて持続可能な形をどう作るか。そのためには日産だけではできない」と語る。外部の知恵も取り入れて運用の効率化やコストの削減などを検証し、持続的なサービスとして進化させていく考えだ。

(藤原 稔里)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)6月8日号より