ロシアのウクライナ侵攻を受け、中古車や中古部品などの輸出業界から、今後のロシア向け輸出の動向を懸念する声が出始めている。海運関係者などは「日本からロシアへ向かう自動車専用船やコンテナ船は今後、荷動きが鈍る可能性がある」と見ており、中古車輸出への波及が避けられない状況だ。2021年の仕向け地別輸出台数でトップのロシア向けが停滞すれば、国内の中古車オークション(AA)価格にも影響する可能性もあるだけに、今後の対ロシアへの経済制裁の動向に関心が高まっている。
ロシアでは21年、原油高などを背景に中古車需要が高まっており、同年の日本からの中古車輸出実績が前年比28.3%増の16万2249台となり、13年以来8年ぶりに仕向け地別で首位となった。海運関係者によると「ロシアへの航路自体は今のところ止まっていないが、戦争状態ということで状況が見通せない。情報収集を行っているところ」と情勢の確認を急いでいる。
日本からロシアへの自動車、自動車部品の輸送はロシア極東のウラジオストクが玄関口となる。コンテナ船からシベリア鉄道を経由して欧州に輸送されるケースもある。「経済制裁で、日本からロシアへの輸出はもちろんのこと、ロシアを経由した欧州への輸出が減少、または停止する可能性もある」とも危惧する。
米国や欧州連合などはロシアを国際決済システム「国際銀行間通信協会」(SWIFT)から締め出す金融制裁を科すことで合意し、日本も参加する。ロシア中央銀行の外貨準備の利用制限を含む厳しい追加経済措置も行う。こうした措置を受け、一部の中古車取引で活用される電子マネーは、ロシアからの送金を停止する措置を取った模様。この動きがさらに拡大すれば、日露間の中古車ビジネスにも影響が拡大するのは間違いない。
金融市場ではルーブルの売りが殺到し、為替も不安定な状況が続いている。日本中古車輸出業協同組合の佐藤博理事長は「現在はロシア向けの輸出は通常通りだが、今後が心配」と指摘する。「経済制裁が本格化すれば、車両代金の決済に不具合が生じる可能性もある」との懸念も示し、今後、動向を注視していく考えだ。
一方、戦地となっているウクライナも物流が滞りはじめた。国土交通省海事局によると、ウクライナ南部オデッサ州の港近くで、日本関係船舶が被弾したことなどもあり、現在、ウクライナ向けの船舶は出航の取りやめが相次いでいるという。
(船木 正尋)
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月2日号より