商品やサービスの不当な表示から、消費者の利益を保護する景品表示法の運用基準が変わり、中古車の買い取りが同法の規制対象であることが明確になった。これまで、手数料などで消費者に誤解を与えかねない表示を行う事業者が出ており、顧客とトラブルになる事例が生じていた。今後、中古車の買い取り業界でも同法に基づき、広告やホームページの健全化が進むとみられ、関係団体からは歓迎の声が上がっている。
消費者庁は4月18日に、同法の運用基準を改定した。従来、古本や中古車などの買い取りはこれまで、同法における商品やサービスの取引に「含まれない」としていた。改定後は、査定などを通じて物品を換金するサービスを提供していると認められる場合に、「『自己の供給する役務の取引』に当たる」と定められた。今後は中古車の買い取りを手掛ける事業者には、広告内容などで適切な情報発信が求められることになる。
もっとも中古車買い取り事業者の多くは、改定前から適切な表記を行ってきた。ただ、ここ数年、中古車の買い取りに乗り出す事業者が目立ち、これに伴い、消費者が誤認しやすいような広告やインターネットでの露出が増える傾向にあった。中古車の買い取り事業者などで組織する日本自動車購入協会(JPUC、井上貴之代表理事)によると、「ホームページ上で買い取りのキャンセル料が明記されていなかったために、事業者と消費者の間でトラブルが生じた」こともあったという。
JPUCは今回の改定を受け、「買い取り業界の環境改善が進むための一歩」と、期待感を示す。日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連、海津博会長)も、「消費者にとっては有益な改定」と歓迎する。
今後は買い取り業界内で、自主的なルールづくりに向けた動きも出そうだ。ある関係者は「同法に規定される『公正競争規約』を買い取り業界でも設定できる可能性がある」とみている。この規約は消費者庁長官および公正取引委員会の認定が必要となるが、景品類や表示に関して各業界が実態に合わせ、広告表記の基準などを定められる。同法を順守しつつ、中古車買い取り関連各社が事業しやすい環境を整えるためには、規約の制定も選択肢の一つになるとみられる。ただ、自動車業界にはすでに、「自動車公正競争規約」が設けられている。新たな規約の制定には、この規約を踏まえた議論が必要になりそうだ。
(舩山 知彦)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月20日号より