環境省は、脱炭素化の実現に向けた資源循環の方向性を示す「循環経済工程表」の素案を公表した。レアメタルや自動車など重点項目に定める素材、製品で2030年頃までに必要な3R(リデュース、リユース、リサイクル)に関する取り組みの方向性を示した。工程表では、電気自動車(EV)など電動車のリサイクル領域での脱炭素戦略の必要性なども盛り込んだ。素案を基にパブリックコメントを募り、今夏の取りまとめを目指す。
昨秋に閣議決定された「地球温暖化対策計画」に基づき、工程表を作成する。脱炭素社会の実現に向けた政策では、経済産業省が主体となって作成している「クリーンエネルギー戦略」が6月にも公表される見通しだが、環境省がまとめる循環経済工程表では、資源循環に絞った方向性を示す。
今回公表した素案では、「50年カーボンニュートラル実現」を見据えて、30年頃までに必要な施策をまとめた。素材ごとの方向性では、ベースメタルやレアメタルなどの金属を重点分野とし、ライフサイクル全体で資源循環に取り組むとした。足元で起きているロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、ニッケルやコバルトといった車載用電池をはじめ電動車で用いるレアメタルの回収を徹底し、特定の国に調達を依存せず、国内で一定量をまかなえる体制を構築する。金属のリサイクル原料の処理量を30年度までに現状の2倍とする目標も盛り込んだ。
自動車の分野では、使用済み自動車の処理プロセス全体での脱炭素化も目指す。これに向け、解体や破砕などで発生する二酸化炭素(CO2)の排出実態の把握に乗り出すほか、自動車リサイクル分野における脱炭素戦略の検討も始めるとした。
中央環境審議会内の部会で詳細を精査し、今夏に取りまとめる。工程表は、来年度の予算要求や法案改正などに反映させていく考え。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月25日号より