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自動車業界トピックス

環境省のカーボンプライシング小委員会、有識者の議論白熱 経済成長と脱炭素化が焦点

国内エネルギーコストが高まると、自動車をはじめさまざまな産業が「国際競争力を失う」

菅義偉首相が指示した「成長戦略に資するカーボンプライシング」の検討で、有識者の議論が白熱している。環境省が7日開いた「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」で、政府が新たに示した2030年度目標の達成には「『炭素税』を早急に導入すべき」とする学識者の意見が目立った。その一方、経済界からは国内エネルギーコストがさらに高まると、自動車をはじめとしたさまざまな産業が「国際競争力を失う」として、バランスを取る政策の必要性を訴えた。環境省は今夏をめどに「中間整理」を取りまとめる考えだが、今後も激しい議論が続きそうだ。

「炭素税導入すべき」の声も大きいが

今回の小委員会では日本製鉄系シンクタンクの日鉄総研が、海外のカーボンプライシング実態調査を報告した。この中で、自動車や機械が成長をけん引する産業構造を持つ日本とドイツを比較。電力消費が多い産業では、政府が徹底した減免措置を導入しているドイツに対し、日本の電気料金が「約2.5倍になっている」ことを指摘。産業界の負担がさらに増すカーボンプライシングを採り入れると、低コストな輸入品への置き換えが進み、「国内事業の休止・撤退が出てくる」と警鐘を鳴らした。

中小・小規模事業者への対策を求める声も挙がった。足元の新型コロナウイルス感染症の影響で経営環境が悪化した中小事業者が少なくない中、経済団体が「追加的コスト負担は大変厳しい」と切実に訴えた。

仮に、脱炭素化に向けた投資をいったん行ったとしても「継続した取り組みが難しいケースも多い」とし、政府による支援の充実が欠かせないことを強調した。

経済界は、民間企業で広がった「排出量取引」を踏まえてさまざまな政策の有効性を追求しつつ、各産業のグローバルな成長基盤を維持する方策を探る考えだ。

しかし、4月の「気候サミット」で日本は温室効果ガスの排出量削減について、30年度に13年度比46%減という厳しい目標を打ち出した。その実現では、炭素税という強力な措置を行わなければ間に合わない可能性があるのも事実。カーボンプライシングを巡る議論は経済産業省でも行われており、経済成長と脱炭素化をどのように両立していくのか、政策の方向性への注目が高まっている。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月10日号より