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自動車業界トピックス

空飛ぶクルマ、どう広げる社会受容性

VRなどで広く体験機会を

「空飛ぶクルマ」の実用化が現実的になってきた。政府は2025年に開催予定の大阪万博での有人飛行を皮切りに、地方部、都市部の順で社会実装を進める方針を掲げる。一方、実用化のスピードに対し、利用者や社会の意識醸成が追い付いていないとの指摘もある。法整備や技術の確立とともに、安全性や利便性を利用者に周知し、社会受容性を高める必要がある。

体験者はVRゴーグルを装着する

政府は3月にも空飛ぶクルマの新たなロードマップを公表する。従来のものよりも短期間に実施する事業計画に重きを置き、23年に実機を用いた実証実験を開始、25年の大阪万博で来場客を乗せた有人飛行を目指すことを盛り込む方針だ。

デロイトトーマツコンサルティングの海野浩三ディレクターが「20年代後半には現実的な手段になってくる」と話すように、空飛ぶクルマは、もはや未来の乗り物ではなくなってきている。ロードマップでは20年代前半にモノの移動から始まり、20年代半ばには地方での人の移動、20年代後半からは都市での人の移動で活用を始める計画だ。ロードマップ通り進捗すれば、数年以内には実機が空を飛ぶようになる。

乗車中のイメージを体験できる

社会実装に向けては、量産を前提とした機体開発や採算性の確保、法律の改正など課題が山積するが、その中でも重要なのが、社会受容性の醸成だ。離着陸の場所や飛行ルートを確保するには、近隣住民や企業の同意が必要になる。利用者にも、安全性が担保されていることを理解してもらわなければ広く普及させることは難しい。空飛ぶクルマを受け入れてもらえる意識風土を、実用化の前の段階で整えておく必要がある。

この現状を踏まえ、社会受容性の育成に乗り出した企業群も出てきた。三菱地所、デロイト、ドリームオンの3社は、VR(仮想現実)を使った空飛ぶクルマの実証実験を開始。一般モニター向けに、地方空港からの観光用途での利用を前提とした、搭乗から乗車までの一連の流れをVRで体験できる機会を提供する。VRに応じて動く実機も用意したほか、乗車中は、人工知能(AI)によるルート案内や観光地紹介などを疑似体験できる。

三菱地所の佐野洋志オープンイノベーション推進室長は「安全性はもちろん、移動時間の短縮やビジネスと観光の融合など、新たな価値をVRで体験してもらうことで、空飛ぶクルマのメリットを感じてもらえれば」と期待を込める。同実証実験の成果は政府が公表を予定する新たなロードマップにもフィードバックする考えだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月3日号より