岸田文雄首相は23日、都内で米バイデン大統領と会談し、米国が主導する新たな経済連携「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」への日本の参加を表明した。日米を含む13カ国が参加し、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、半導体を含む戦略物資のサプライチェーン(供給網)の再構築などに取り組む。日米の同盟関係を改めて世界に示し、経済面で台頭する中国をけん制した格好だ。
バイデン大統領は、就任後、初の来日となった。迎賓館(東京都港区)で行われた会談後の記者会見で、バイデン大統領はIPEFの発足を宣言、岸田首相も日本の参加を表明した。日本のほか、韓国やシンガポール、オーストラリアなど13カ国が参加する見通しで、対中国を念頭に置いたインド太平洋地域における新たな経済的枠組みが誕生する。
IPEFは4つの柱で構成される。そのうちの一つが半導体など戦略物資の供給網の強化だ。会談では、先端半導体の開発などで日米連携していく方針で一致した。車載用を含む半導体は、日米を含む先進国が重要物資に位置付けている一方、コロナ禍による供給網の寸断で足元では半導体不足が深刻化している。
米調査会社Knometaリサーチによると、21年の半導体ウエハの世界生産の75%を韓国、台湾、中国、日本といったアジア勢が占めた。米国は安全保障の観点から中国への警戒を強めており、IPEFで日本や韓国と協調することで、中国に依存しない半導体供給網の確立を目指す考えだ。
IPEFの柱の中には「デジタル経済を含む貿易」が含まれるものの、「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」や「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」などに含まれている関税の引き下げや撤廃などは盛り込まれなかった。岸田首相は会見で、IPEFの立ち上げを歓迎しつつも「米国がTPPに復帰することを期待したい」と述べた。
また、バイデン大統領は、経済保障において半導体、電池などの産業が重要であるとの認識を再度示した上で、「日米でより緊密に協力していく」方向性を強調した。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月24日号より