梶山弘志経済産業相は6日の閣議後会見で、調達リスクが高まっている半導体について「(工場火災などの)事故があったとしても、しっかりと供給できる体制づくりに政府として支援していく」方針を示した。半導体の現況について「自動車用が不足している」との懸念を指摘。事実、今月に入り、スバルが1万台規模の減産を表明したほか、スズキも一部ラインの操業休止を公表するなど、自動車産業への影響が色濃くなっている。日本経済への貢献度が高い自動車産業の影響を抑えるためにも、対策を急ぐ考えだ。
梶山経産相は「今、世界的に半導体が不足している」とした上で車載用に強みがある「ルネサスエレクトロニクスの火災も重なった」と、危機感を表す。日本政府は台湾の半導体大手に代替生産を打診しているほか、経産省もルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)の復旧に向けて生産設備の確保などをバックアップしている。しかし、早期の調達リスク解消につながるかは不透明。足元で明らかになった半導体のサプライチェーンの脆弱性の解消を早期に実現できなければ、さらなる自動車産業への影響も想定される。
また、昨年10月に火災が発生した旭化成の延岡工場(宮崎県延岡市)でも半導体の生産再開に道筋がついていない。梶山経産相は「復旧断念を決定したとの認識はない」とし、「代替生産や他社製品の置き換えが進んでいる」とした。しかし、これらの一部を引き受けていたとみられるルネサスも、工場火災で生産態勢が急激に悪化した。完成車だけでなく、カーナビなどの電子製品の生産にも影響が出始めているとみられ、さまざまな方面に半導体調達のリスクが広がってきている。
経産省では足元の半導体対策を急ぐと同時に、中長期的に強靭な半導体のサプライチェーンの構築にも動いている。梶山経産相も「半導体は世界的な戦略製品」と強調し、今後の日本の産業競争力を左右する重要な要素に位置付ける。このため、海外移転が進んだ半導体工場を国内回帰させる戦略を打ち出すなどの対策を急ぐ構えだ。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月7日号より