経済産業省は「水素保安ポータル(玄関)サイト」を開設した。モビリティや定置用など、用途ごとに関連制度や実証事業、法令担当窓口など水素保安に関する情報を一元化して提供する。水素はこれまで産業用が主だったため、民生利用を想定した保安体制が充分に整っていない。経産省は世界に遅れずに合理的な保安規制体系をつくるため「水素保安戦略」を3月にまとめた。この一環としてポータルサイトも運用する。高圧水素タンクや配管部品など水素関連部品に商機を見いだす自動車部品メーカーにも役立ちそうだ。
水素保安戦略では①技術開発を通じた科学的なデータに基づく取り組み②水素社会の実装に向けたルールの合理化・適正化③水素利用環境の整備―の3方針のもと、官民のデータ共有や規制の国際調和、実証実験の円滑化、自治体との連携、リスクコミュニケーション、人材育成などを進めることにしている。
水素は、用途に応じて電気事業法、ガス事業法、高圧ガス保安法など、適用法令や資格が異なるほか、例えば「水素パイプライン(導管)を敷設する際の法令担当窓口がわかりづらい」との指摘も過去にあった。こうした現状を踏まえ、ポータルサイトでは水素保安に関する情報を一元化して提供する。コンテンツは順次、充実させていく予定だ。
世界の主要国も水素保安の見直しを急いでいる。EU(欧州連合)は域内の「ガス指令」を改正し、水素供給網の構築をにらんで規格化を進める。米国でも連邦機関と州、地方政府などの間で水素規制の足並みをそろえる議論が進む。
日本としても、こうした国々に遅れをとらないよう、水素保安を見直すとともに「水素閣僚会議」や多国間・二国間会議などの場を通じて水素保安規制の国際調和や標準化に関与していく考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月4日号より