経済産業省は、「2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)達成」に向けた自動車産業における技術ロードマップ(工程表)の策定に乗り出す。燃料転換や製造工程などで必要な技術や投資額を整理し、実装年や削減目標を明記する。企業はこの工程表を指標に、自社の脱炭素化を進めることになる。年内に一定の取りまとめを行い、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」に反映する。

経産省は、二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、脱炭素に時間と資金を要する産業向けに技術工程表を策定している。すでに石油や鉄鋼、電力といった7分野で工程表を設けており、自動車産業の工程表も新たに策定する考えだ。
自動車の工程表には、CO2の排出量が多い電池製造や生産工程における再生可能エネルギーの利用に関わる脱炭素技術などが盛り込まれるとみられる。鉄鋼の工程表では製造プロセスにおける水素技術の活用が、石油の工程表ではCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の導入目標などがそれぞれ示された。経産省は自動車の工程表に関して、年内に方向性を固める。
企業はこの工程表を踏まえ、脱炭素化に向けた取り組みを進めることになる。また、個社ごとの工程表の達成度は、金融機関における融資の判断基準にもなる。自動車などCO2の排出量が多い産業は技術転換に大規模投資が必要だが、脱炭素に直結する技術や製品開発向けの「グリーンファイナンス」では融資の対象にならないケースも少なくない。そのため、段階的な削減を進めるための「トランジション・ファイナンス(移行のための資金調達)」が必要になる。工程表で脱炭素化のスキームを見える化することで、トランジション・ファイナンスのモデルを確立する考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月23日号より