経済産業省は15日、企業の取引先などによるサプライチェーン(供給網)での人権侵害を防ぐための方針を示すガイドラインを策定すると発表した。製品の製造や流通過程などの供給網全体で強制労働などの人権を侵害する行為がないかを検証するための指針などを作る。有識者を交えた検討会で素案をまとめ、今夏をめどに作成する。自動車を含めた産業界全体で人権に対する意識を醸成し、健全なサプライチェーンの構築を目指す。
欧米では企業の人権問題に取り組む姿勢が、取引先を選択する基準の一つになりつつある。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資を呼び込む上でも重要な指標になっているという。
一方、日本企業の取り組みはまだ道半ばだ。昨秋に経産省が実施した調査によると、上場企業約2800社のうち、人権方針を策定している企業は約7割にとどまった。人権リスクの管理手法である「人権デュー・ディリジェンス」を実施している企業に関しては全体の半数ほどだった。
このような現状を受け、政府として企業向けに人権侵害を防ぐためのガイドラインを作成する。検討会では、国際的な制度調和や将来的な法整備も視野に入れて議論を進める。
同日の閣議後会見で萩生田光一経済産業相はガイドラインの策定によって「日本の政府や企業が国際スタンダードに則った取り組みを行うと内外に明確に示す」と説明した。
人権問題をめぐっては、中国の新疆ウイグル自治区での労働搾取などが問題視されている。供給網のグローバル化で自動車を含む製造業でも、より一層のリスク管理が求められることになる。日本企業の国際競争力を維持する上でも、重要なガイドラインになる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)2月16日号より