経済産業省は、来春をめどにサプライチェーン(供給網)の高度化に向けた共創戦略をまとめる。デジタル化や環境規制、ロシアのウクライナ侵攻といった足元の動向を踏まえ、日本企業を中心とした供給網のデータ連携モデル創設を目指す。国内にとどまらず、自動車を含む日本企業と結びつきが強い東南アジア諸国連合(ASEAN)を巻き込み、官民一体でアジア地域での連携を模索する。
企業を取り巻くサプライチェーンのリスクは高まりつつある。ウクライナ情勢の悪化によるエネルギー高や供給網の脆弱性を狙ったサイバー攻撃、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルへの対応などが求められている。
また、自動車業界においては、サプライチェーンの混乱が半導体不足に拍車をかけている。自動車業界と半導体業界は、在庫の持ち方や生産オペレーションなどに対する考え方が異なり、その不一致が需給面での混乱を生じさせている原因の一つになっている。車両の自動化や電動化で自動車にとって半導体は必需部品となっていることから、特性の異なる供給網間での円滑な連携も進める必要がある。
実現に向けて、専門の研究会を立ち上げた。サプライチェーンを取り巻く構造変化やデジタル化によって企業の調達、購買行動がどう変化するかなどを検証するほか、企業間におけるデータ連携基盤の必要性などを議論する。
加えて、ASEAN地域との供給網の連携も強化する。欧米や中国がASEAN内の需要獲得を狙い、自国のデジタルプラットフォームを展開していることを踏まえ、日本としても「日アジアサプライチェーン共創戦略(仮称)」を取りまとめる。系列を超えた提携の先進事例の創出や域内でのデータ共有基盤の確立を目指す。
来春をめどに共創戦略の骨子を固め、案の取りまとめを目指す。戦略案は、予算措置や政策への反映を見込む。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月6日号より