経済産業省は、太陽光パネルなどの再生可能エネルギー発電設備の導入拡大に向けて提言案をまとめた。土地の開発から設備廃棄までのサイクルで求められる対応や必要な法整備を検討し、地域と共生した形での導入を目指す。自動車関連企業が再エネ設備を設置し、自社内で使用する電力を再エネでまかなうケースが増えているほか、再エネの拡大は電気自動車(EV)など電動車の普及でも重要な役割を担う。自動車産業のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)を実現する上でも重要な指針になりそうだ。
政府は「エネルギー基本計画」の中で2030年度の電源構成について現状で20%ほどの再エネ比率を36~38%に高める目標を掲げており、その約半分を太陽光発電が担う。ただ、太陽光パネルを設置する際の住民への説明不足や設備の管理不備、廃パネルの不法投棄など、不適切な事案が報告されており、普及に向けた課題となっている。今後、太陽光を中心とした再エネの普及が本格化する前に課題を洗い出し、適切な運営に向けた制度づくりを急ぐ考えだ。
提言案では、再エネ設備を設置する土地の開発前、土地の開発から再エネ設備の運転時、設備の廃止・廃棄時の3段階でそれぞれ必要な対応を示した。盛土規制法などの規制対象エリアの案件は開発前の手続きを厳格化するほか、指定区域などの地理情報は環境アセスメントデータベース「EADAS」に集約し情報共有を進める。災害リスクが高い設備には機動的な立ち入り検査ができるようにするほか、廃パネル放置などがあった場合は外部積み立てを用いることで自治体などが廃棄費用を負担しなくても良い仕組みをつくる。提言案は今後パブリックコメントを募り、今秋に最終取りまとめを行う。
自動車産業においても、生産拠点などに太陽光パネルや蓄電池を設置し、自社で使う電力を再エネに転換する取り組みが増えている。EVが普及すれば動力源として大量の電力が求められることになり、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない再エネの重要度が高まると見込まれる。適切なプロセスを示すことで、再エネを着実に普及させ、自動車産業の脱炭素化にもつなげる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月1日号より