経済産業省は、2030年に年300万㌧の水素を供給する商用サプライチェーン(供給網)の構築を支援する。水素は既存燃料と比べて高コストな点が普及のネックになっている。長期契約などで販売価格と販売量を安定化させる支援スキームの立ち上げを検討し、事業者の大規模投資を促す。商用車を含む燃料電池車(FCV)の普及や、水素、アンモニアを用いた電力の脱炭素化を見据え、早期に支援を開始する。
政府は昨年公表した「エネルギー基本計画」の中で、30年度の電源構成における「水素・アンモニア」の目標値を全体の1%に設定した。30年の水素の供給量は、20年より100万㌧増となる、年300万㌧の確保を目指す。目標の達成に向け、早期に商用サプライチェーンの立ち上げを図る。
20年時点の1N㎥(ノルマルリューベ)当たりの水素の製造コストは約100円で、販売価格に対して製造コストが割高な状況だ。販売量自体も少ないため、設備投資を回収できないといったリスクもはらむ。企業の大規模投資を促すため、長期契約の形態とすることで販売価格の固定化や需要の安定化を図れるスキームの構築を検討する。30年には1N㎥当たり30円に引き下げを目指す。また、水素やアンモニアの供給コストの低減も進める。コストの目標値や補助上限額の設定などに加え、例えば、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る「固定価格買取制度(FIT制度)」で導入されている電力買取価格における入札制度など、他分野での導入事例も参考に制度設計を行う。
総合資源エネルギー調査会内の専門の小委員会で詳細を詰め、早期に支援策を実施する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)4月19日号より