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自動車業界トピックス

経産省、自動車税制の抜本改正提起へ

「モビリティ」への進化踏まえた枠組みを

経済産業省は、自動車税制の抜本見直しを提起する。自動車産業を「モビリティ産業」と定義し、国富の創出や社会課題の解決につなげる政策の枠組みを検討する一環として税制度のあり方を検討するよう求める。自動車利用者に税負担の大半を求める「受益者負担」の原則も、社会課題の解決に伴う「受益の広がり」を踏まえて見直したい考え。電動化の進展に伴い目減りする燃料税収の補填を自動車利用者に求める「財源の付け替え論」に一石を投じそうだ。

EV化や貨客混載など新しいモビリティ産業に合った税制の見直しを求める

2023年度の税制改正要望で、エコカー減税やグリーン化特例の延長・拡充などと併せ、「モビリティがもたらす新たな経済・社会を踏まえた自動車関係諸税のあり方」を長期的に検討するよう求める。電動化や自動運転技術の普及に伴い、自動車は電力需給を平準化したり、移動制約者の新たな移動手段になる役回りが期待されている。また「貨客混載」や移動販売、移動治療など、技術進化や規制緩和で少子高齢化社会が抱える課題を解決できる可能性も広がりつつある。

経産省としては、こうした自動車の進化を政策的に後押しすることで、社会課題の解決と産業競争力強化の〝一石二鳥〟を狙いたい考え。包括的なモビリティ産業政策を検討する一環として税制のあり方を議論するよう政府・与党や地方などの利害関係者に幅広く提起する。

現在の税負担を正当化する根拠として定着している受益者負担論も見直すよう求める。受益者負担論はもともと「道路整備で恩恵を受けるのは自動車利用者」という理屈で、道路特定財源制度を維持するために提唱された。同制度は08年度限りで廃止され、自動車税収の使途に制限はなくなったが、今でも日本の税負担(登録車)は米国の約30倍、ドイツの約5倍と突出して重い。自動車業界は税収の使途が自由化されたことを契機に減税を求めているが、政府・与党内では「自動車に関連する税は道路の維持や更新に相当額、使われている」(自民党の宮沢洋一参院議員)との認識がいまだに支配的で、減税に及び腰だ。

将来、電気自動車(EV)が普及すれば、約8兆8千億円ある自動車関連税収の半分を占める燃料税収が激減する。政府・与党の一部には「走行税」などで減収分の補填を自動車利用者に求めるべきとの意見がある。これに対し、日本自動車工業会の豊田章男会長は「すべて車体(課税)側にやられるということは絶対に避けていきたい」と反対し、「税のあり方も成長戦略、産業政策の中で腰を据えて見直すべきだ」と強調する。

経産省としても、財源の単なる付け替えで自動車利用者の重い税負担を放置すれば国内市場の縮小に歯止めがかからず、最終的に日本の自動車メーカーの競争力をそぎかねないと危惧する。受益者の概念を捉え直し、モビリティ産業の成長と財源の確保を両立させる方向で幅広く議論を喚起したい考えだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月29日号より