経済産業省は、車載用電池の二酸化炭素(CO2)排出評価制度について、欧州では算定しない「使用段階」も評価に加える意向を表明した。製造時のCO2排出の少なさだけでなく、日本勢が強みとする電池性能を評価に組み込む狙いがある。将来的には評価制度を国際調和する過程で、こうした項目を採り入れるよう国際会議の場などで働きかける考えだ。
経産省は現在、蓄電池のライフサイクルアセスメント(LCA)におけるCO2排出量を算定する「カーボンフットプリント(CFP)」の制度設計を「蓄電池のサステナビリティに関する研究会」で進めている。まずは電気自動車(EV)の普及で流通量の急増が見込まれる車載用電池を対象に、年央にも中間取りまとめを行う予定だ。
車載用電池のCFPでは、「原材料調達・生産段階」、完成車工場から販売店まで車両を輸送する「流通段階」、車両の使用段階、廃車後のリユースやリサイクルといった「使用後処理段階」の4段階が主な算定対象になる。
欧州の電池規則では、LCAのうち電池の使用段階は算定対象外だ。「走行時の使用電力は製造事業者の影響下にない」(規則)との理由からだ。一方、経産省は「走行で消費される電力そのものは製造業者が直接、影響を与えにくいが、充放電ロスは蓄電池の性能によって左右され、製造業者が影響を与えるとの意見もある」(製造産業局自動車課)とし、電費や充放電ロス率を用いた算出方法を研究会で例示した。このほか、製造工程では部材ロスの影響を測定基準に組み込んだり、流通段階では電池の国内・海外調達それぞれでの基準づくりも検討する。
LCAにおけるCFPの基準は、自動車メーカーや部品メーカーのカーボンニュートラル(炭素中立)対策を左右する。経産省としては、将来的な国際調和をにらむ一方で、日本の企業が著しく不利にならないよう制度設計を進めていく考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月29日号より