日刊自動車新聞社

モビナビ学生 モビナビ転職

新規会員登録は現在受付を休止しております

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

経産省、電力使用制限令を検討 早ければ7月にも発動

経済産業省が、企業などの電力の使用を強制的に制限する「使用制限令」の発動について検討に入った。今後、産業界などと調整し、発動の有無を決める。発動されれば、東日本大震災の影響で使用量を制限した2011年以来、約11年ぶりとなる。前回の発動時には自動車業界も休日変更など節電対応に追われた。足元では、自動車メーカー各社とも半導体不足による生産計画の引き下げを余儀なくされているが、電力不足への対応も合わせて求められることになりそうだ。

今年度も東京を中心に電力不足が懸念される(写真はイメージ)

使用制限令は、電気事業法27条に基づき、電力危機の場合に限り、経産大臣が電力供給を強制的に制限できるもの。対象となるのは契約電力が500㌔㍗以上の大口需要家で、使用電力量や使用最大電力を政府が制限する。

第一次石油危機が起きた1974年に初めて発動され、東日本大震災が発生した2011年が2回目となった。11年の発動では2万~3万事業者が対象となり、7~9月の約3カ月間にわたり電力使用を制限した。完成車メーカーや一部の部品メーカーの工場も対象となり、電力需要が比較的高まる木・金曜日を休みにして土・日曜日に稼働するなど、稼働日を変更して対応した企業が多かった。

脱炭素化の潮流を受けた火力発電所の休廃止の増加や、ウクライナ情勢の悪化による燃料調達リスクを踏まえ、経産省は、今年度も使用制限令の発動を検討する。経産省が27日に公表した電力需給の予測では、厳気象(猛暑および厳寒)を想定した場合、7月に東京、東北、中部地方で、予備率3.1%となる見込み。安定供給に最低限必要とされる予備率3%に迫る数字だ。さらに、1~2月にかけては東京エリアで予備率がマイナス0.6%~マイナス0.5%になる予測もあり、電力供給をまかなえない可能性が高い。

使用制限令の発動には、省令の整備や産業界への通達などで「数カ月必要」(担当者)となる。そのため、まずは7月の電力不足への対応に向け、早々に発動の検討に入るとみられる。

発動された場合、自動車産業への影響は確実だ。各社とも再生可能エネルギー設備の導入など自社で電力をまかなう体制の構築に注力しているが、全てを自家発電で調達するのは現実的に難しく、11年と同様に、休日を変更するなど稼働調整で対応する可能性が高い。自動車メーカーは、すでに半導体不足による生産調整や生産目標の引き下げなどを強いられており、節電対応への負担は大きい。今夏の電力確保に向け、先んじた対処が必要となる。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月30日号より