経済産業省は29日、親企業116社の取引先企業への価格転嫁の状況を公表した。自動車関連企業では、前回調査から点数が上昇した企業と下降した企業に分かれ、二極化が進んだ。昨年末以降に企業の価格転嫁の取り組みが活発化してきたが「サプライチェーン(供給網)全体に反映されるにはもう少し時間がかかる」(中小企業)との見方が大勢だ。原材料やエネルギー価格の先行きも不透明で、重層的なサプライチェーンを持つ自動車関連の親企業には実態に即した継続的な取り組みが求められそうだ。
経産省は「価格交渉促進月間」を年に2回設定し、適正な価格交渉の周知や調査を実施している。今回は3月の促進月間終了後、親企業の価格転嫁の状況について調査し、約1万7千社の中小企業から回答を得た。直近6カ月間における「価格交渉」への積極性と、実際の「価格転嫁」率を4段階で点数化し、116社の親企業を実名で公開した。実名公開は今回で2回目となる。
完成車メーカーでは、日産自動車が価格交渉の項目で最高点数を、価格転嫁の項目で上から2番目の点数を獲得した。同社は前回調査時の価格転嫁で完成車メーカーとして最低点だったが、改善が進んでいる。トヨタ自動車、ホンダは2項目とも前回調査と変わらず、上から2番目の評価だった。
一方、いすゞ自動車と三菱ふそうトラック・バスの2社は前回、価格交渉の点数が上から2番目だったが、今回の調査では上から3番目の点数に下がった。
前回調査時に価格交渉の項目で最低点数だった不二越は、上から2番目の点数を得た。日本精工やジェイテクトなども、2項目とも前回調査より高い点数を獲得した。
前回、価格交渉の項目で最高評価を得た豊田自動織機は今回、評価を1つ下げた。
完成車メーカー、部品メーカーともに前回調査からの評価の上げ下げで明暗が分かれた格好だ。価格交渉をめぐっては、昨年暮れにデンソーや豊田自動織機などが「取引先と協議をしないまま取引価格を据え置いた」として公正取引委員会が改善を要請した経緯があり、今年に入ってから官民を挙げて価格転嫁の取り組みが進められてきた。
同調査は、昨年10月から今年3月までの価格転嫁の状況を調査したものだ。中小企業庁の担当者は「(取り組みの成果が出るまでに)タイムラグが少しある。取り組みが継続できていれば、(次回調査で)転嫁率の上昇が期待できるのでは」と語った。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月30日号より