経済産業省は、親企業150社の取引先企業への価格転嫁の状況を初公表した。4段階評価のうち最高の「(受注側企業からの回答平均が)7点以上」を獲得した企業は8社にとどまり、完成車メーカーは「7点未満~4点以上」が大半だった。価格転嫁をめぐって、取引先との協議の機会を設けなかったとして、デンソーなどが公正取引委員会から改善要請を受けたばかり。西村康稔経産相は「賃上げのカギは中小企業だ」とし、親企業に対して適切な価格転嫁を求めていく考えを改めて示した。
昨年9~11月の「価格交渉月間」において、約1万5千社の中小企業を対象に調査した。このうち10社以上の中小企業が「取引がある」と回答した親企業150社の状況を実名で公表した。
製造業では、住友化学、日本製鉄などが最高評価を得た。トヨタ自動車やホンダ、スバル、スズキなどの完成車メーカーや豊田自動織機は、次点の7点未満~4点以上だった。全体平均を下回る4点未満の企業には、日産自動車やデンソーに加え、ヤマト運輸などの運送業者が挙がった。
経産省はこのうち、価格転嫁状況が芳しくなかった親企業約30社に指導や助言を行っていく方針だ。
自動車産業の価格転嫁は、他産業と比べて遅れている状況と言える。中小企業庁による昨秋の調査では、完成車メーカーや大手サプライヤーの価格転嫁率は全27業種中、20位にとどまった。特に、電力やガソリンなどエネルギー上昇分の転嫁率は平均29.9%だったのに対し、自動車産業は23.9%だった。輸送業の転嫁率は最下位だ。
西村経産相は、価格転嫁状況を実名公表する理由として「企業の自発的な行動を促すため」と説明した。政府が掲げる賃上げ政策の実現には「雇用の7割を担う中小企業がカギになる」とし、取引の適正化に向けた働きかけを今後も強めていく考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月9日号より