経済産業省は、二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する「CCS事業」のロードマップ(工程表)をまとめた。2030年以降の事業化をにらみ、事業コストを足元から4割以上、下げるほか、責任の所在などを明確化した法整備も進める。CCSは火力発電や製鉄業の脱炭素化につながる。自動車のサプライチェーン(供給網)全体のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指すうえでも着実な進展が必要だ。
火力発電所や工場から排出されたCO2を回収し、地中に圧入、貯留するCCSは、製造業におけるCO2削減につながるとされる。今回、作成した工程表では、50年の時点で年間1億2千万~2億4千万㌧のCO2貯留を目安とし「30年以降に事業の本格展開を目指す」とした。
30年以降に毎年600万~1200万㌧ずつ貯留量を増やしていくことを前提に、事業コストの低減を進める。分離・回収コストは30年に足元から半減させ、50年には4分の1にまで下げる。輸送では50年に7割以下、貯留は8割以下とし、CCS全体でかかるコストとして現在の6割以下を目指す。
あわせて「CCS事業法」を早期に整備する。現在は法令の適用関係が不明確なため、保安体制の整備やモニタリング責任の有限化などを新法で措置する。
CCSは、日本国内ではまだ実証段階にとどまるが、経産省によると、世界では200件近いプロジェクトが進行している。26日には日本製鉄が三菱商事、エクソンモービルと覚書を締結。日鉄の国内工場から排出されたCO2を回収し、海外で貯留する検討に入った。
火力発電への依存度が高い国内の製鉄業や自動車産業が「50年カーボンニュートラル」を達成する上でもCCSは欠かせない。経産省としては、官民一体で早期の事業化を目指していく。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月28日号より