経済産業省は7日、電気自動車(EV)などの充電インフラ整備促進に向けた指針の骨子案を関係会議に示した。高速道路、一般道ともに充電器の高出力化を進めるほか、2025年度をめどに従量課金方式の導入を目指す。EVが普及期に入りつつある中、利便性に目配りしつつも、充電インフラ事業の自立や社会的費用の最小化を目指す。
政府が30年目標として掲げる「充電インフラ15万基(うち急速充電3万基)」の達成に向けた方向性を示した。①ユーザーの利便性向上②充電事業の自立化・持続化③社会全体の負担の軽減―の3点を原則として打ち出した。
①では、充電器の複数口化と高出力化を進める。現在、設置されている急速充電器の平均出力は約40㌔㍗級だが、高速など充電需要が高い場所では一口90㌔㍗級以上を基本とする。特に需要が高い場所は150㌔㍗級の設置も検討する。また、普通充電器の出力上限も、今年度中に現行の6㌔㍗級から10㌔㍗級へと見直す。
高速道路では70㌔㍍間隔で充電器を整備する。国道では、充電器同士の距離が30㌔㍍以上になる区間を減らす形で整備を進めていく。
②では、25年度に従量制課金の導入を目指す。現在は30分ごとなどの時間制だが、外気温や電池温度などにより時間当たりの充電量が異なり、料金の納得感に乏しい。このため、特に高出力充電器において、充電した電力量(㌔㍗時)に応じた課金制度を優先導入する。
また、欧米で標準化が進む国際標準通信プロトコル「OCPP」の搭載も補助要件に盛り込むなどして普及を促す。設置後のメンテナンスやアップデートを効率的に行えるようにするほか、将来的には電力需給が厳しくなった場合の充電制限なども視野に入れている。
③では、充電インフラ補助金の見直しを進める。今月末から受け付けを開始する「予備分」を用いる補助制度では、従来の先着順を改め、「キロワット当たりの申請額(円/㌔㍗)」が低い順に申請を受け付ける。費用対効果が高い充電器を普及させるのが狙いだ。また、高出力化で電気料金の上昇も想定されるため、電力会社における小売電気料金体系の再検討なども促していく。
充電器の整備目標や総出力数などの数字目標は、月内にまとめる指針案に盛り込む方針。これまでは電欠を防ぐため量的整備を優先させてきたが、EVや充電器が普及フェーズに入ってきたことから、今後は利便性とともに事業性や社会的な投資効率などにも配慮したインフラ施策へと舵を切る。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月8日号より