経済産業省は、電気自動車(EV)向け充電網に関する官民検討会を6月上旬にも立ち上げる。「2030年までに15万基(うち急速充電器3万基)」の政府目標に向けて官民の足並みをそろえるとともに、電力系統への負荷対策と急速充電器の高出力・複数口化を一体的に進め、投資の費用対効果を高める。世界の主要国も充電網の整備を急ぐが、電力系統対策や持続的な運営体制など課題が多い。日本としては充電網整備で先行した経験を生かし、年内にもロードマップ(工程表)をまとめる。
検討会は経産省のほか、完成車メーカーや充電事業者、高速道路会社、商業施設の運営企業などで構成し、政府目標へ向けて課題を話し合う。同省が別に設けた検討会では、電力需給に応じた充電機能の制御や制限の必要性なども議論されており、電力系統への負荷が偏らないよう、急速充電器に遠隔制御機能が義務付けられる可能性もある。場合によっては関連法の改正も必要となるため、新設した検討会で議論を深めるとみられる。
急速充電器の複数口化・高出力化に関しては、今年度から補助制度を拡充するなどしているが、さらなる普及に向けた施策を検討する。特に高速道路での急速充電器数は全体の1割弱(22年3月時点)にとどまっており、重点的に整備していく。商業施設などで充電スペースを確保しやすいような施策も議論する。
22年3月末時点での国内の公共充電器設置数は約2万9千基、このうち急速充電器は約8200基にとどまる。政府はこれまで補助金を投入して充電網の整備を支援してきたが、約2万7千基を整備した17年以降、設置数は伸び悩んでいる。充電器の老朽更新や電力系統対策、「充電待ち時間」の解消など新たな課題も含め、官民検討会で議論して施策をロードマップに盛り込む。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)5月18日号より