経済産業省は28日、2030年の電気自動車(EV)向け充電器の整備目標を、従来の15万基から「30万口」に変える方針を関係する検討会に示した。「充電器全体の総出力」という新指標も採用し、現在の約10倍に高めるほか、集合住宅など「基礎充電」の設置目標として10万~20万口を新たに掲げた。25年度には充電量に応じた課金制度の導入も目指す。普及フェーズに入ったEVと足並みをそろえ、より利便性が高く持続可能な充電網を志向していく。
今回の方針をもとに、21年6月に公表した「グリーン成長戦略」で掲げたEV充電器の30年目標を改める。普通、急速充電器合わせて15万基だった従来目標を、充電口ベースで「30万口」に倍増させる。急速の設置目標に関しては3万口から変更はしない。
充電器全体の総出力に関しては、EVの普及をにらみ、現在の約39万㌔㍗の10倍に当たる約400万㌔㍗の確保を目指す。
普通充電では、移動先の駐車場などの「目的地充電」用途で10万~15万口、集合住宅などの基礎充電用途で10万~20万口の整備を30年目標として設定した。
急速充電では、30年には平均的な出力を現在の2倍となる80㌔㍗にまで引き上げる。高速道路など短時間充電ニーズが特に高い場所では一口90㌔㍗以上を基本とする。高速で1カ所に4口以上設置する場合、150㌔㍗の充電口を一カ所以上、設置することを求める。また、30年の各施設での設置目標も示し、ディーラーでは7千~1万口(22年は約3100口)を目標とする。ディーラー全拠点の約半数が設置する計算になる。
従量課金の開始に向けては、新たな料金体系の仕組み作りや、ユーザーを戸惑わせないような料金体系の統一に向け、完成車メーカーやCHAdeMO(チャデモ)協議会などで制度作りを進める。25年度からは、円滑な需給調整や機能更新をにらみ、国際標準通信プロトコル(通信手順)「OCPP」を充電器に搭載することをインフラ補助金の要件に盛り込む。
ユーザーの利便性向上と充電事業の自立化、社会負担の軽減を三本柱に新たな充電網の構築を目指す。今後、パブリックコメント(意見募集)を踏まえた上で各施策を具体化していく。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月29日号より