経済産業省の伊吹英明・新製造産業局長は日刊自動車新聞などとの取材に応じ、電気自動車(EV)や車載電池工場の国内立地に対し「何かしらのインセンティブを設ける必要がある」と語った。車載電池などは経済安全保障推進法で「特定重要物資」に指定され、補助金の拠出も始まった。ただ、販売や環境の規制と組み合わせた欧米の囲い込み策に対抗するため、減税など支援の枠組みを日本としても拡充していく考えだ。
伊吹局長は「各国とも自国内で電池やEVの生産を囲い込みたいと動いている。日本のように生産車両の多くを輸出する国にとっては、商売がやりにくくなってしまう」と懸念を示し、WTO(世界貿易機関)の枠内で支援策をさらに拡充する考えを示した。
民主主義や自由貿易の理念などで日本と足並みをそろえる欧米だが囲い込み策は露骨だ。米国で昨年成立した「インフレ抑制法(IRA)」は、優遇対象を北米で最終組み立てされたEVに限るほか、原産地規則も厳しい。欧州委員会は、車載電池などの需要の4割を域内で生産することを課す「ネットゼロ産業法案」を発表した。米国は欧州の「ユーロ7」より厳しいとされる環境規制、欧州は2035年以降に内燃機関車の販売を原則禁じるなど、それぞれ強力な規制と組み合わせる。
日本も電池サプライチェーン(供給網)への補助を始めたが、補助額でも欧米に見劣りする。経産省として、多様なパワートレインを念頭に置きつつ、EVや車載電池産業でも劣後しないような政策を練る考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月31日号より